オトンとオカンと
あとは若者同士で
仕方ない、と私達は商店街の喫茶店に入って腰を落ち着けようとした……がしかし。
「ま…待つんだ佐助ェ…」
「え、なにどーしたの?」
さぁっ、と青ざめた私を不安げに見つめる佐助に伝わるように目配せした。
何故か理解したように(忍者は伊達じゃない)彼は、チビっ子たちを連れて喫茶店を出た。
その事態に驚いたような顔をする前田慶次に、小十郎が言いづらそうに「食費がな」と呟いた。
「あぁ…なるほどねぇ」
「佐吉と竹千代はまだいいんだ…!佐吉は食わない子だし、竹千代はグルメだからな……問題は…」
弁丸は言わずもがな甘味に目がない。買い置きの菓子を高い所に隠しても、物干しを軸にぐるぐると跳んで大惨事(部屋の中が)を起こした事が記憶に新しい。
そして、思わぬ伏兵は梵天丸で彼も竹千代と同じくグルメではあるが、品質を気に留めない。そしてことごとく、改良しようとする。小十郎の実家から送られて来た大豆を見つめて何やら画策していた。
まあ、給料日前で金欠な事が一番でかいんだが。
◇◆◇◆◇
「…前田の、表に出な」
「いま座ったばかりだぞ小十郎!すいませーん、お冷や下さい」
開始早々に実力行使はよくない。まだ話し合いで解決できる。
「おっ、いいねぇ!喧嘩かい!」
「な、なんてこった…!」
乗り気か。
頭を抱えた私の隣で、何故か残っていたらしい佐吉がぽんぽんと慰めるように私の背をさすっていた。
うん、有難う佐吉。
何故残っているんだ。
「とにかく、とにかくだ…っ!『前田慶次』も小十郎達と一緒で、戦国時代の人の生まれ変わり…でいいのか?」
「…まぁ、そーなるねぇ」
「…俺は許さねえぞ?こんなどこの風来坊とも知れねえ奴と交際なんてな…」
「小十郎は現代の言葉が伝わらないのか…っ?!」
いつまでも引きずるのは良くない。しかし小十郎は親の敵でも見るような目で…というか、睨んだ相手を消し炭にする勢いだ。
埒があかない。
「…っ!小十郎っ!」
ばしん、と机を叩くと小十郎が驚いたように目を見開いた。
「私は今は誰とも付き合うとか考えられない、そんな暇がない、だから…ええと……」
うまく纏まらない私を見かねてか、慶次が「あーあっ」と残念そうな声を上げた。
「…な〜んだ、俺フられてたんだ…」
「うっ、……誠に申し訳ありません…」
「いいって、まだ知り合ったばかりだしさ」
にこっ、と爽やかに笑う慶次に罪悪感を感じていると。何故だか手を取られた。
「これから知ってけばいいんだよ!」
きらきら、とまるで花咲くような効果が見えた気がしないでもない。
その隣で、
ぐしゃり、と前髪を崩す小十郎と。
どす黒いオーラを放つ佐吉がいないでもなかった。
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