オトンとオカンと
発見
さて、つまみも買ったし帰ろうか。因みに私は大学の近くのマンションでひとり暮らしだ。
佐助と小十郎はなんとか実家から通っているらしいが、たまにうちに泊まったりもする。保育園時代から一緒なもので、もはや恋情やら男女のあれこれは起きるはずもない。
そして、オートロックの脇から鍵で自分の部屋の前に向かっていた時だった。
「…なんか、扉開いてる」
「えっ、マジで」
佐助が慌てて、私の前に出て開いたままの扉に手をかけた瞬間。
「う、うわぁああっ!」
小さな子供の悲鳴が上がった。よく見れば、栗色の単発に何故か着物を着ている。声からして少年だが、小学校低学年かそれ以下だろう、とても小さい。
「うるせーよ弁丸!」
「うああぁああんっ!」
ひょい、と私の部屋からもうひとり少年が顔を出した。彼も同じくらいの背丈だが髪は黒く、片目に包帯を巻いている。
状況判断に困っていると、扉を開けた張本人の佐助は持っていた団子の包みを開いて、泣いている方の子に差し出す。
すると、目にも止まらぬ速さで彼は団子をくわえた。表情は先ほどと打って変わって幸せそうだ。
しかし佐助は浮かない顔で、もうひとりに名前を尋ねる。
「…梵天丸だ」
なんとも古風な名前だが、昨今の名前の多様化の中で原点回帰が起きているのかもしれない。
「嘘だろ…」
佐助の、驚愕に振える声が聞こえたがここはまぁとりあえず。
「警察に電話だ」
「待って鵺子!頼むから!」
「どうして、親御さんが心配してるかも知れないし捜索願出されたら誘拐犯扱いされる。それは避けたい」
「超一般論で正論なのは分かるけど、俺様の知り合いだから!だから大丈夫!」
なんだか必死に止める佐助の傍らで、団子を食べていた男の子は串だけになったそれを噛みながら佐助の服を引っ張りながら、
「…さ、すけ?」
「…っ旦那ぁ…っ!」
首を傾げた子を見て、泣き出しそうな顔をした。いやいや、なんで名前知ってんの。なんで佐助は嬉しそうなの。
知り合いって言ってたけども。
「…仕方ない、部屋に入ろうよ佐助。近所の騒ぎになる前に」
「えっ」
気が付けば、近所のおば様方が覗き見している。どうせ噂のネタにしたいんだろうが。
「別に、佐助と噂になっても嫌じゃないからいいか」
「何気に嬉しい事言うなぁ」
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