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オトンとオカンと
それは何処かの戦場で


ぞくり、と身の毛がよだつ感覚に慶次は襲われた。

何故だか、振り返ってはいけない気がして多分振り返ったら死ぬような気がして、けどどうにもこうにも話が進まないので。

震え上がる四肢を必死に抑えて、慶次は明るく声を上げた。
しかしながら声は震えて、涙が滲む。

「い、意外に茶目っ気あるんだねぇ…!小十子ちゃんんん…?」


「……、」


えもいわれぬ殺気が背中に突き刺さって貫通して行く気がした。しかし、同時に違和感を覚える。


「…この感じ、前に…」



脳裏に蘇ったのは、あの戦国の世の合戦場。
俺は喧嘩のつもりだったけど、周りはそうはいかない。

俺の首を持って帰れば英雄?

誰の首もいらないし、置く場所もないからね。

まぁともかく。




「ほぅ、いい度胸だなぁ…?」

「……はは、完璧に女子じゃないよねぇ…」



間違いなく、あの時の女の子ではない。

もしかすると、この後ろの男は俺を誰かと勘違いしているのかもしれないし、実はあの子の彼氏や兄貴かもしれない。

しかし、何故こんな状況になったのかを考えると。


「…認めたくないけど、俺振られちゃったのかねぇ…」


そう脳で理解したはずが、なぜだか胸がじくりと痛んだ。振られた?だからこんな状況に?

うわ、ちょいと凹むよ。



思わず背筋が丸くなり、なんとか笑みを浮かべて耐えるが意図せずに涙が溢れた。おいおい、こんな程度で泣くなよと思うだろうけど、なんかもう情けなくなったんだ。許して欲しい。



そんな、時だった。



「こじゅうぅうろぉおぉっ!」

「なっ、鵺子?!」


だだだ、と音をたてて全力疾走して来たのは。
俺を振った…?はずのあの子で、ちなみに振り返ったら見覚えのある顔が見えた気がしたがそれより。

何故か鬼気迫る表情の、鵺子と呼ばれたあの子は見覚えのある奴に


「不純同性交際禁止ぃいいっ!」

と、真っ赤な顔で叫んだ。



当然、


「…なに?」
「は……」


俺達はポカーンとしてしまったのだけど。




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