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オトンとオカンと
寝る子は育つ



相変わらずリビングに雑魚寝している鵺子達。寝静まったその部屋で、もぞもぞと起き上がったのは佐吉だった。


「……、」

佐吉は正直、この状況について行けてなかった。家の手伝いをしていたら何故か見知らぬ土地に来ていた。
しかも、武家のお偉いさんの子供らしい奴まで居た。
何故か奴を見ているとイライラするのだが、理由が分からないので表には出さない。


「……、鵺子…」

隣で寝ている女は、どうやら偉い身分ではないらしいがあの竹千代…サマ、と普通に話していた。今此処に居る事がにわかには信じられない、

何故、ここに居る?



「…眠れないか、佐吉」

「…っ」

「儂もだ」

鵺子の向こうから、竹千代の声がした。無視しようかとも思ったが、なにぶん寝付けない。仕方なく「あぁ」と返事をした。

普通に喋る事に、抵抗があったのだが竹千代は気にしていないようだった。

「…何の為だろうな、儂らが此処へ来たのは…」

驚いた。
同じように思っていたのか。
嬉しくはないが。


「……誰かが、呼んだのではないか」

「そうか、儂は……もしかすると儂が『逃げ出したかった』からかと思ってな」

なるほど、
先ほどの鵺子との会話を聞いてしまったので佐吉は納得する。人質なんてまっぴらだ。

「…私は、逃げ出したくなどなかった…」

「…では、違うのかもなぁ」

竹千代が疲れたように笑った。それを聞くと、帰りたいと思っている私はなんなのだろうとも思う。



「…夜に、考え事をしてはいけませんよ」


「聞いていたのか、鵺子!」
「…何故だ?」

暗闇で目を凝らすと、感情の読めない瞳が私を見つめていた。そして鵺子は私たちの背をぽんぽんと、さするように叩いた。

「人は夜、悲観的になるので。夜は寝てしまった方が良いですよ…特に子供はね」

そういうもの、なのだろうか。しかし寝れないものは寝れない…はずだったのだが、彼女の手が私をさするから不思議と安心して、

結局眠ってしまった。


「…寝る子は育つ、ですよ」




まさか、その言葉が『こういう形』で実現するとは夢にも思わない。




◇◇◇◇◇

翌朝の事。


やけに狭いなと思って、身じろいだ鵺子は気がついた。…子供サイズじゃなくなって…る…!?

まさか佐助がすり替わったのか!?(何度かあった実例)


「…佐助、また小十朗にネギ…で、」


目を開くとそこには、


「……」

小学生サイズのチビたちが、アグレッシブに寝っ転がっていた。



あっは、悪夢か。


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あきゅろす。
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