オトンとオカンと
御近所さんは見た
「おっ!お帰り〜鵺子…」
ひょっこりと、小十郎の後ろから佐助が顔を覗かして表情を固めた。
「…増えてない、鵺子?」
「増えた、寝る所どうしよう」
「それ所じゃねぇ…鵺子、てめぇ誰に告白されたのか正直に吐きやが……徳川に石田、かっ…!?」
小十郎が私の両サイドの子供達を見て、途端に険しい顔をした。
やはり、知り合いだったらしい。
「…着物を着ていたからな、梵天丸や弁丸と同じかとは思ってました…」
「そういう判断基準なの?あながち間違ってはないけどさぁ……」
佐助も玄関先に出て来て、しゃがみ込んだ。じぃと二人の顔を見比べて、小馬鹿にしたように吹き出した。
「はは、ちっさ」
「…ざんめつ」
佐吉から、えもいわれぬ殺気を感じて冷や汗をかいた。しかし佐助は余裕のある表情で佐吉の頭をワシャワシャと撫でる。
「凶王にこんな時代もあったんだな〜…」
「…っ、」
佐吉が、勢いよく佐助の手を払って小さいながらに彼を睨みつける。
「すみません、佐吉。…彼に悪気はないのですが、なにぶん軽い性格ですので…」
「うわ、ヒドいな鵺子……さて、どうしたもんかね……んっ?」
佐助が何かに気が付いたのか、急に立ち上がって眉をひそめる。理由は直ぐに分かった。
「ちょっと、今何時だと思って……な、なによこの子達…っ!?」
いわゆる御近所さんが、扉を開いて私達を凝視した。
あ、やばい。
子供4人とか、男女同棲とか、私ひとり暮らしだって大家さんにだって言ってしまったのに。ただでさえ、男2人が出入りしてるから周りの評判悪いらしいのに。
どうしょう、
頭が回らない私の前に、小十郎が歩み出た。堂々とした立ち振る舞いに私が安心した時だった。
「…申し訳有りませぬ。此度は親類の子を預かり、このような時間まで騒ぎ立て…私の力量足りなかった故に不快な思いをされた事、割腹する他ありますまい…っ!」
ツッコミを入れる暇がなかった。
「待とうね、右目の旦那?さすがにこの時代にそれはないよ」
ありがとう佐助。
「そ、そうよ…?アンタ良い男なんだからこんな所で死んだりしちゃ駄目よ?」
ありがとう御近所さん。
小十郎は何も言わないで、俯いている。御近所さんは必死にフォローした後、小十郎に「生きてたら良い事あるわよ」と再三言って撤退していった。
…一応、ありがとう小十郎。
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