オトンとオカンと
変と恋って似てる
しかし、ここで引き下がる訳には行かない。この世は一期一会!せめて名前を聞かないと、探すにも探せない。
慶次は、意を決したように鵺子の手を握り締めた。
「…俺、アンタに惚れたんだっ!」
「……っと、こんな時間になってしまいました…佐助からメールで報告も来ましたし、早く帰らないと」
「本気なんだ…っ!」
ぎゅっと力のこもる手に、鵺子の表情が少し変わった。
「…まさか、ゴミ箱…」
「違うよ!違わないけど!…信じてもらえないかも知れないけど…、好きだった人に似てるんだ……あっ」
その理由は、黙っといた方が良かったと今更気が付いた慶次さん。
「あ、いや、本気なんだよ!確かに見た目も重要なんだけど、なんか惹かれるんだ、だから…!」
「…もう、止めて下さい」
「違う、俺は…!」
焦る慶次の前に、飾りっ気のない携帯電話が突き出されていた。
あきらめたように、鵺子が「…赤外線」と呟いて。無我夢中で慶次はメアド交換したのだった。
「…後をつけたりしないで下さいね」
「ギクッ…勿論だよ!」
今この人ギクッって言った…!鵺子は内心冷や汗をかきながら、子供二人の手を繋いでその場を後にした。
ちなみに、
「はぁ…小十子(ことこ)ちゃんかぁ…!可愛い名前だなぁ」
慶次が教えられたのは、小十郎が鵺子を心配するあまりに、赤外線のやり方をわざと間違って教え、自分のアドレスを教えるようにしたのである。
男性限定で。
その夜、友達の家に泊まった慶次は延々と鵺子に送るメール(のつもりが小十郎に着くメール)の文面を考えて夜を明かしたそうな。
それはまた別の話なのだが。
***
帰路についた鵺子と、佐吉と竹千代は会話をせずにマンションまで帰って来た。
扉の前まで来て、竹千代が抵抗をみせた。
「…離せ、儂は織田に人質にとられて居る身だ。こんな所に居る場合では…っ」
「…人質…?」
誘拐でもされていたのか。
…あれ、じゃあ…。
「今、私が誘拐犯になるのでは…どうしよう…」
悩むの鵺子服を、静かに引っ張るのは佐吉だった。
「……赤い」
「…はい…?」
きょと、と見上げる佐吉はそれだけ言うと眉をひそめた。
横で、竹千代がため息を付く。
「…鵺子、と言ったな?先ほどから顔が真っ赤だ、と佐吉は言いたいのだろう」
「…え、」
思わず、手を頬にあてると。吃驚するくらい熱い。
理由なんて知れてる。
「…は、初めて告白された…から…?」
「…おい、今なんて言った鵺子」
いつの間にか、扉は開いていて。小十郎が仁王立ちして、鬼のような顔で私に尋ねたのであった。
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