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オトンとオカンと
目と目が合う瞬間


ゴミ箱に、頭を突っ込んだままの『前田慶次』はとにかく状態を起こそうとして、頭にゴミ箱着けたまま立ち上がった。


「…ん?そういえばさっき、『政宗』って…」


思案するよりも、先にゴミ箱を外した方が良いのだがそれを教えてくれる人は居ない。

「…うーん、まさかねぇ…」


『前田慶次』は、前世の記憶を持ったまま転生した。
つまり佐助や小十郎と同じ境遇であるが、唯一違うのは。


「そんな訳無いよな!だって今まで会った事ないし」

自分と同じ境遇の、転生した武将に会った事が無かった。

ちなみに、彼もまた鵺子たちと同じ大学に通っているのであるが、なんの縁か接点はまったく無い…


「…なに、してるんですか」


ハズだった。



突如として、『前田慶次』の頭からゴミ箱が取り除かれる。
開けた視界に居たのは、


「……っ!」

「…すいません、ゴミ箱に頭を突っ込む性癖をお持ちだったとは露知らず…」

「とりあえず、否定しとくよっ!?」



慌てて否定する『前田慶次』を疑わしげに見つめて居るのは、二人の子供を連れた鵺子だった。

ちなみに、二人の子供は興味無さげに佇んでいる。

ふと、その子供にもデジャヴを感じた『前田慶次』だったが、それより重要な事があった。


「あ、アンタ…!名前はっ!?」

どぎまぎしながら、名前を尋ねる。
対して、鵺子は目をすぅっと細めた。


「……人に名前を尋ねる時は、まず自分からです…」


「すいませんでした…!お、俺は『前田慶次』っ!…あ」

高らかに、名前を宣言したのは良いが。それは今の自分の名前ではない、けれど…

「…どうしました、前田さん」

「…いや、慶次でいいよ!その方が俺は嬉しいから」

にこにこと、楽しげに笑う慶次に毒気を抜かれたように微笑んだ鵺子は、
「…私の名前は個人情報なので教えれません」

「情報社会って、ある意味戦国時代より恐ろしいんだな…!?いや、待って!俺別に変な人…じゃ…」


ただいま深夜2時過ぎ。
先ほどまでゴミ箱に頭突っ込んでた人。

急に黙りこくった慶次に、鵺子が微笑んだ。

「不審者ですか?」

「否定できない…!」


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