オトンとオカンと
深夜に出会う子
「あぁ寒い…っ!こんな中よく防寒着も無しに外に出たな…」
鵺子は、そう呟きながら辺りを見回す。
子供は風の子、っていうけれど。確かに小さな頃は平気だった気がするが、大人になりつつある時分としては寒さはダイレクトに来るようになった。
「…不安になってないだろうか…」
彼らは何故か、車や飛行機やアスファルト舗装道路を物珍しそうに見ていたのだ。
だのに、妙に肝が据わっているから安心していたけれど。
やっぱり、私に子育てなんて無理だったのだろうか。
「…ん?」
近くの公園で、何かが動いた。
まさか、とは思ったが小さな影が二つ。
私は慌てて公園へと走っていた。
***
「あれ、確かに見たのに…」
誰もいない公園は、なんとなく不気味だ。
辺りを見回していると、いつの間にかポツリと小さな影が立っていて、慌てて駆け寄って肩を掴む。
「大丈夫ですか!?心配し―――――…っ、え…?」
「……」
違う。
立っていた少年は、年齢こそ近いものの梵天丸でも弁丸でもなかった。
キョトンと私を見上げる瞳がやけに澄んでいて、サラサラした銀の髪が額を隠すように伸びている。
ずいぶん奇抜な髪型だな、と思ったのに服装はまるで時代劇の農民のような…
「…動くな、ふとどきものめっ」
「…え」
自分の背後にもうひとり、キラリと光る刃物を持った少年……やはり、着物を着ている黒髪の子供が私を睨み付けていた。
「よくやったぞ、佐吉!ぬしが囮になって敵を引き付ける作戦は、成功だな!」
「……竹千代」
ポツリ、と呟いた佐吉に竹千代と呼ばれた黒髪の子供は、何故か眉をひそめた。
「儂を気安く竹千代と呼ぶな!農民の分際で、頭が高いっ!」
「…はい?」
格好だけじゃなくて口調まで時代劇なのか?しかも同じくらいの子に対してなんたる暴言…。
そして佐吉と呼ばれた子は、地面に座り込んで土下座をするようにした。え、なにこれイジメなの?
なのに竹千代は、当たり前のようにそれを眺めて、再び私に視線を戻した。
「…お前は農民か?武士か?…変わった服を着ているが、まさか南蛮人か…!」
「……」
言いたい事は、色々ある。
この時代劇ごっこや、刃のついた日本刀を向けられている事、果ては南蛮人扱いも大目に見る事にしよう…
問題は、「こんな深夜に徘徊して、騒ぐんじゃありません…っ!」
ベッドタウンですよ!
マンションだらけですし、時間も時間ですよ!
なのに、二人はポカーンと私を見上げている。
なんだって言うんだ、全く。
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