オトンとオカンと
トラブル続きだな
「はぁ、旦那達の喧嘩にゃ首突っ込むつもりはなかったけどさー……いい加減にしなよ、」
いつの間にか、佐助が二人の間に立ち。静かな怒気をはらませながら双方を睨んだ。
「…近所迷惑だ」
そうなのだ。
戦国で有れば放って置くとこだが、なにぶんマンションの一室であるから、隣近所に丸聞こえの可能性がある。
一応、鵺子の部屋に居候させて貰っている身としては彼女が此処に居辛くなるようなトラブルは避けたい訳であって。
ついでに、これ以上うちの(ちっさい)大将が(これまたちっさい)独眼龍に余計な事言わないように。
釘刺してやるのも、まぁ大人の役目だよな。と佐助は思っていた、
のだが、
「……さ、佐助も俺を怒るのか…!」
ぶわ、と大きな瞳に涙が溢れて。弁丸の頬が真っ赤に変わっていく。
あ、ヤバい。
と佐助が思ったのも束の間、
「うぁあぁぁあっっ!梵も佐助も嫌いだ!嫌いだぁああっっ!」
バタバタ、と駆けて行く玄関はよりによって鍵が開いていた。ここ数日で洋服の扉に慣れた弁丸は、あっさりその扉を突破して深夜のマンションを疾走して行く。
「やっば…!」
慌てて、後を追おうとした佐助はしかし。もう1人の小さな影が同じように駆けて行くのを見て唖然とした。
え、なんで。
前世の俺様ならいざ知らず、今の俺様はちょっと身体能力の良い大学生で、つまり、
「……畜生っ!」
ぎりり、と奥歯を噛み締めて。佐助は鵺子と小十郎を起こすべく踵を返した。
歯がゆい。
この世での俺様は、ただの大学生だなんて。彼らを簡単に連れ帰る事が出来ないのだから、
なのに、この世は。
決して、子供二人が深夜に出歩ける程安全なんかじゃないんだからさ。それは不公平っしょ、神さん?
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