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オトンとオカンと
こどもかいぎだ!


付き合ってもいない男女と、戦国時代から来た子供の共同生活が始まって早数日。
お約束と化した雑魚寝をしている暗い部屋で、小さな影が動き出した。

「…梵!」


ゆさゆさ、と眠っている梵天丸を揺り起こすのは何やら気合いの入った弁丸で、ひそひそ喋ろうとして上手く行ってない感じだ。

「…ぁあ?何だよ弁丸…」

眠たげに目を擦りながら、梵天丸が上半身を起こす。因みに二人の(小十郎が自腹で買った)パジャマは梵天丸が恐竜、弁丸が虎で二つともフード付きの可愛らしいものである。


無理矢理起こされた梵天丸は明らかに気分を害しているのに、弁丸は気付いてか気付かずか誇らしげに話し出した。


「いい事を考えついた!」

「あー…分かったから、鵺子達起こしちまうから…もっと『てんしょん』下げてくれ…」

「て、てんしょん?」


困惑する弁丸に、梵天丸は「気にすんな」と続きを促す。

「う…気になる…が、きいてくれ梵!俺はご飯といつもの恩返しをしようと思うのだ!」

「静かにする気あるか?
(弁丸こいつ…普通に喋れるくせに鵺子にかまって欲しいからって、拙い喋り方してたんだな…)
…へぇ、まぁ確かに世話になってばかりじゃあ寝覚めが悪いよなぁ」

梵天丸が同意すると、嬉しそうに弁丸が頷いた。

「そうだろう!だから『ぶじん』らしく『せんか』をあげれば母上も喜ぶし、母上を悪く言うやつなんて…」

「…『すとっぷ』だ。弁丸…前から思ってたんだが、鵺子を母上と呼ぶのは止めろ」


「す、すとっぷ…?今度はなんとなく分かるような…?母上と呼んでいけないと、なぜ梵に言われねばならぬ!?」

「…とにかく止めろ、虫唾が走るんだよ…」


睨みつける梵天丸の目に、思わず泣きそうになる弁丸は勇気を振り絞るように拳を作った。


「…そうで無ければ、俺は寂しい……っ」

「はっ、ガキだなぁ弁丸」

「梵は、寂しくは無いのか…?母上と離れて、屋敷も侍女も居なくなって…」



純粋な疑問だった。
同じ位の歳である筈の梵天丸は、頑なに彼女を名前で呼ぼうとする。それは、何故か。


だのに、彼はまるで。
地獄でも見たような、陰鬱な暗い瞳で吠えた。


「俺に…母親なんて必要ないんだ…っ!あの人は、俺なんか見てない、のになんで…父上は…っ!こんな目が、」

「ぼ…梵…?」


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