オトンとオカンと
継続的な
「じゃあ、とりあえず寝ようか」
「「待て鵺子!」」
なんで、明日も大学あるのに。寝てはいけないなんておかしい。しかし二人は、止めに入ってくる。
「あのな、鵺子…今夜はみんなで寝るべきだと思うんだけど」
「なん、だと…!助けて小十郎、貞操の危機です」
「そんな余裕あるならどうにかしろ」
そんなやりとりをしていると、先ほど鵺子から剥がされた弁丸がぐずりだした。
「ははうえぇ…!」
「うわ、旦那ごめん起こした!?」
慌ててあやす佐助の努力虚しく、弁丸は鵺子に向かって手を伸ばして暴れている。
鵺子は、意を決したように佐助の腕から弁丸を受けとった。
「…大丈夫ですよ、弁丸」
「ははうえぇぇ!」
必死にしがみつきながら、弁丸は泣きじゃくる。おそらくストレスを感じているのだろう、早急に睡眠を取らせないと。
私のそばで目をこすっていた梵天丸の手も取って、とにかく寝室へ「鵺子、俺様も一緒に寝るってばー」
「…何故」
「わぉ、目が据わってるよ鵺子さん!…いや、なんと言うか俺様もすっごく久しぶりに旦な……弁丸に会った訳だからさ、お願い!なんもしないように努力するから!」
「猿飛てめぇ、何もしないと断言しろ!」
小十郎が叱咤しながら、私を気遣うように見やる。
「小十郎も、梵天丸を見守りたいのか」
「……あぁ」
しょんぼりとする二人を見て、眠たそうな二人を見て、子供が寝るには遅い時間を確認して。
私は、ため息をついた。
***
「川の字どころか州の字だよ」
寝室じゃ狭いから、リビングに敷き布団をひいて私を中心に子供たちが眠り、一番外に佐助たちを寝かせた。
「なんか、修学旅行みたいだな!」
「佐助、黙ろうか」
寝ろって言ってるんだ私は。
けど、昨日まで一人で寝ていたのだから私だって眠れない。
因みに、子供たちは両サイドからひっついてくる。苦しい。プレスされる。
「……少しいいか、鵺子」
今度は小十郎が喋った。まぁいいや。
「…梵天丸は、少なくとも家に帰りたがってはいない」
「……それは、」
「お前も、わかったろう?」
そうだ。彼はまるで大人のように振る舞っているけど。それは強くあろうとする虚勢である。
まだ、小学校にも通えないくらいの小さな子供に、こんな無理をさせる家庭が普通であるはずない。
「けど、小十郎はなんで知っているの?この子とどういう関係?」
「…右目」
「…うん?」
聞き取れなくて、暗闇のなか小十郎を見つめるが彼の表情は読めない。代わりに大きな手が伸びてきて、私の頬を撫でた。
「……小十郎?なに?」
「…そんな顔を、するな」
変な事を言う。
こんな暗闇の中で、私がどんな顔をしてるかなんて分かる訳ないのに、
わかりきったように、小十郎は私の目尻の雫を拭き取った。
「すまないな、鵺子……」
「……っ、」
「すまない…」
…幼い頃に。助けて、と声を上げた私を彼らは助けようとしてくれた。
けど、力不足は目に見えていて。
結局私は、病院送りになってしまったのだ。
けど、
「ありがとう、」
確かに、力不足だったけれど。私は嬉しかったよ。私にもまだ、私が傷付いて泣く人が居るんだと分かって。
それで、十分だったんだよ。
なのに、佐助も小十郎も、未だに苦しそうな顔をしてその事を謝るんだ。子供の頃の話なのに、無力な自分を憎むように、彼らは今も苦しんでいる。
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