ある夜の秘恋の噺
社家からの使者
普通に暮らしてきた。両親こそ居ないけど、竜友が当たり前にそこに居てくれて。
けど、それも。
全部、『社家』の手の上だったのか。
***
「ずっと待っていたんですよ『カグヤ姫』……だからこそ、求婚者のひとりである竜友さんに監視と保護を任せていたのです」
「…へぇ」
別にそれはいいや。守ってもらっていた事は間違いないし。
「それで、なにかあるの」
だって、そうだろう?ただ生まれ変わるだけなら関係ない。記憶が継がれているらしいのは、彼ら『求婚者』たち。
なら、『カグヤ姫』の俺は?
俺の質問に、
千晶さんは笑みを深く、
辰壬さんはびくりと震えて、
竜友は、
衣類をタンスに入れ、って本当にシリアスシーンやる気あるのか?
「『カグヤ姫』は、『カグヤ姫』……」
ポツリと呟いた、辰壬さんは。
何気なく、
俺の肩の傷口を舐めた。
途端に、
「…死にたいか」
「命日にしてやんよ」
がたっ、と二人が立ち上がった。
はいはい、どーどー。
「…郭哉様分かってないなぁ!別に嫉妬だけで怒ってるんじゃ無いんだからねっ」
何故にツンデレ…
「ん、甘い…」
血が甘い訳はない。
しかし、辰壬さんは「甘いよ」と強調する。
「…僕らには、甘く感じるのかもねぇ」
「なんで?」
「……僕ら、人間じゃないから」
……はい?
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