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ある夜の秘恋の噺
関心のない目




体が重たい。


いえ、あの、体がだるいのもそうなんですが。
物理的に、重たい。



「……やっぱりか」

郭哉は辟易しながら自らの状況を顧みた。今は夜で、自分は布団に寝たままで、そして何故か同じ布団にスヤスヤと眠る辰壬(たづみ)さん。
抱き枕よろしく俺のことを抱き締め……いやもう締め付けるレベルで抱きしめてる。


「竜友ー!チェンジ!」


「私に添い寝しろと言うのか郭哉……、まぁ、その、お前がどうしてもと言うのなら別に寝てやらない事も無いんだからねっ」


「病人にあまりツッコミを求めないでくれ…」

「…すまん」


台所に居たらしい竜友はジャージにトレーナー…って、コイツは本当にやる気があるのだろうか。いやまぁ自宅くらい気を抜いてもいいんだけど、残念な美形だよな…と、しみじみ思う。


「…あの、この状況説明してクダサイ…」


「おはよーございます、姫」


ひょっこりと千晶さんが顔を出す。こちらも私服だったけど、一応大型デパートくらいには行けそうな格好で安心する。


「こんばんは、千晶さん」


「ボクら仕事があってさぁ今帰って来たんだよねェ…
辰壬くんに関しては、まぁ引き剥がそうとはしたんだけど無理でした」


遠い目をしながら、千晶さんはノートパソコンを開いて作業をしていた。そういえばあの人大学生だったな、忘れてたけど。

「仕事?陰陽的な何かですか?」

「いや、まぁ、間違ってはないけど……どっちかというと、土木?」



陰陽的な土木…その言葉の意味は深くて、病み上がりの疲れた頭にはさっぱり理解出来なかった。

とりあえず…


「窒息するから離れて下さい辰壬さん」

「……」

「たぬき寝入りって事くらい分かります」


*****

結局、辰壬さんは渋々ながらも竜友と皿洗いをしているらしい。お手伝い上手にできるかな、ってぐらいに拙い皿洗いだけど。

千晶さんは、無言でノートパソコンを弄っている。あれだ、ブラインドタッチとかいうやつ。


「…そんなに見つめないで下さいよ、姫」

「う、ばれた」


ため息をつきながら、千晶さんがちらりとこちらを見た。色素の薄い、猫のような目が俺を写しながら細められた。

「何か言いたそうな顔ですね」

「いや、その、対したことじゃないんですけれど」

「聞きますよ」

いよいよ、パソコンの電源を落として。
千晶さんは、俺の寝室に入り後ろ手で襖を閉めた。わずかに竜友たちの皿洗いの水音が聞こえた。

電気の消えた寝室に、月明かりが差し込んでいた。


「この方がいいでしょう」

「何言ってるんですか」





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あきゅろす。
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