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ある夜の秘恋の噺


「……流石、竜友だ…鰤の臭みを一抹も感じさせない上に、素材の味を最大限に引き立たせた調味料、部位も腹でこの時期ぴったりの脂のノリが〇%¥¢#…」


淡々と感想を述べながら、箸を進める郭哉の横でいまだに腕を掴んだままの男は、不思議そうに郭哉を見ていた。

20代前後に見えるのに、黒髪から覗く瞳はキョトンとして、幼さを感じさせる。


円卓に座っているので、郭哉の隣は竜友と腕を掴んだままの彼、その横に眼鏡の猫目青年が座っていた。

実にカオスである。
ちなみに、郭哉の前には鰤の照り焼きと味噌汁と白米と和え物が並んでいるが、他三人の前には何もない。


食いっぷりのいい郭哉を余所に、猫目の青年は郭哉の腕を掴んだままの彼に「いい加減離せば」と言って引き剥がしにかかった。



それを静かに見ていた竜友は、割烹着をたたみながら話を始めた。

「…それで、お前たちが来たという事は…」


「竜友、お代わり」


「はいはい」


条件反射のように、茶碗に飯をよそう竜友を見て猫目の青年は苦笑いをした。



「すっかり女房役が板に付いてますね?……本来の目的、忘れてないですか?」

「女房は止めてくれ…」

困ったように眉をひそめる竜友に、「お似合いですよ」と畳みかける青年。



郭哉は、飯を食べながらも。


(…この人たち、竜友の知り合いなのかな)

と心の隅では思っていたが――――――それより飯だ。うん。




「……で、本当に要らないのか」

「ご飯出させる気は無かったので。お気になさらずに」

「……おいし、い?」


「…うん、美味しい」


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