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ある夜の秘恋の噺


「…ただいま、竜友」


「お帰りなさ、って…郭哉?何だその人達は……」


「お邪魔します」
「ごちになります」
「ファンになりました」


スーツ姿の男達は、郭哉の後に続いて家宅侵入を試みた。
当然、家政夫である竜友が行くてを阻んだのだが割烹着姿の美形に睨まれても、彼らは食欲につき動かされていたのである。

あまり新しくない、アパートの一階で。


割烹着の美形とスーツ達との戦いが、


「竜友、冷める!」


「え、あ、そうだな…?」


郭哉によって中断されてしまった。



かに見えた。




『――解式』

男の声がしたかと思うと、いきなりスーツ達の姿がかき消えて代わりに三枚の札が地に落ちた。

その様子に、竜友が目を見開く。


「これは…」


いつの間にやら、夕暮れの中に人影が二つ並んでいる。


一人は、猫のような目で楽しげにこちらを見ている青年。
もう一人は、黒くうねった髪が印象的などこか異国情緒漂う男。


明らかに、異質な空気を纏う二人に郭哉ですら身動きが出来なかった。勿論、夕飯の事は忘れていない。


先に口を開いたのは、猫目の彼だった。

「私の式が、ご無礼を働いたようですね?…カグヤ様?」

彼は、落ちた札を拾い上げると含みのある笑みで郭哉を見た。その動作は優雅で隙がない、見た目は只の好青年であるのに、眼鏡の奥の猫科の瞳はぎらついていた。

郭哉と彼の目線がバチ、と合う。


「……っ」

寒気が走った。
……危険、かも。


そう思って、郭哉は扉を閉めようと竜友を家の中へ引き込もうとしたのだが…


「……だめ」


「…え」


郭哉と、竜友の間に。
静かに佇んでいた、黒髪の彼が入り込んで郭哉の腕を掴んだ。

うねった黒髪の間から、宝石のアメジストみたいな瞳が郭哉を捕らえる。



この、緊迫感ある空気の中で。


地響きのような、腹の虫が鳴いた。




「……もう、いいです」

少し憤慨しながら、郭哉は溜め息をつく。



「…夕飯にしましょう」



「……?」

腕を掴まれたまま、郭哉は家の中へと戻って行くので必然的に腕を掴んでいる彼も付いていく。

外に取り残された二人も、それに準じて家の中へと入る事にしたのだった。





「…カグヤ様ってさぁ……」

「素直で良い子だろう?」

「……ご飯に対して?」


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あきゅろす。
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