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ある夜の秘恋の噺






そういえば、昔から気が付くとトウヤが居た。
流石に最近の非日常ラッシュで、鈍感らしい俺でも薄々感づいてはいる。けれどそれを好ましく想うかは別の話だと思う。


けれども不安は、胸に渦巻いたまま居座っている。

トウヤも、きっと。
転生した求婚者のひとりなんじゃないかって。



じゃあ、


俺のそばに居てくれたのは。



やっぱり、



「しっかりしろ、郭哉!」


◇◆◇◆◇


トウヤの緊迫した声に目を覚ますと、俺を覗き込んでいたらしいトウヤの表情が少しだけ和らいだ。

「…馬鹿野郎、あんだけ日頃食っといて貧血ってんじゃねぇよ」

「いや、だって千晶さんが物理的に」


「うん、ごめんね姫ー。あんだけやっといて、まだ倒せてないんだよねっ☆」


「激しくイラッ」




なんだろう、いい大人が語尾に☆とか付けてきゃぴきゃぴしてるのって誰得なのかな…?あ、俺得してる?珍しい人もいるもんだー…


「あれ、なんでトウヤ居るの」

「あー、それはあれだ。いつもニコニコ…」


「止めよう、伝わらない」


「お、おぉ…。
まーあれだ、いつも一緒に帰る奴が居ない場合、校内探して見るだろ?
そしたらなんか、ぶっ壊したみたいでさ」

「本当によくもやってくれたよ…」


千晶さんが悪態をつくので周りを見渡してみると、真っ暗な校内をトウヤが俺をお姫様だっ……

「おろせ」


「貧血で走れない奴は大人しく抱かれてろよ」



すっげー楽しそうな幼なじみを見上げながら、千晶さんに何があったのか尋ねて愕然とする。

「率直に申し上げるとですね、そこの赤色に僕の結界がぶっ壊されて……むこうさんがまぁ、力取り戻しちゃったから逃げてるんだよね!」


「俺の幼なじみが、すみません」

「悪気はなかったんだけどなー…」



あれ、


これって結構ヤバくない?






と、そこで視界の端に見覚えのある人影が見えたので、トウヤの腕から飛び出して駆け寄った。


「アー君っ!」


「……っ!か、郭哉…!一体何が起きてるんですか…っ?学校から出られなくて、」


座り込んで、苦しそうに胸を押さえつけるアー君を立たせて手を引いた。とても冷たい。


そうだ、アー君は病気で学校に来れなかった生徒なのに。


「アー君、大丈夫…っ?!すごい冷たい、アー君…!」



「姫様ー!急がないと、追いつかれますよっ!」

千晶さんが急かすのに、アー君の体は動かない。どうしよう、どうしたら……




「…なぁ、郭哉」


悩む俺に、トウヤが話しかけて来た。いつものような爽やかな笑顔で。



「悪いけど、もっかいブラックアウトしててくれな?」

「は、」



ドスンと、鳩尾にトウヤのいつも持ち歩いている野球のバットを入れるようなものがクリーンヒットして、

痛みに意識が吹っ飛んで行く時、

トウヤは、その袋から…



朱い鞘の、日本刀を抜き出したのだった。





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あきゅろす。
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