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ある夜の秘恋の噺


はぁ…テンションはがた落ちだ。これの為に学校来たのに…。

「もう帰りたい…」

「あー、じゃあ一緒に帰りましょうか?」

ぐったりとした俺を支えながら、楽しそうに笑う千晶さんは教育実習生とは思えない発言をした。それは無理でしょう、と言う俺に。

「それこそ、陰陽的な何かで出来ますし?」

ひらひら、と紙の人形を見せつける。それ、なんか見たことある…!

「カグヤ様、熱有るんでしょう?なんなら今借りてるアパートのが、竜友さん所より近いですから〜……僕の部屋、来ます?」

「……、」

なん、だろう。この胡散臭さ。



「あ…っと、」
「…そんな必要ない、」


「トウヤ、」

ぐいっ、と腕を掴まれてそのまま引き寄せられる。
追いかけて来たらしい桃耶は、俺を支えながら千晶さんを睨み付けた。
桃耶の身長はデカいけど、流石に千晶さんよりは低い。それでも鋭い視線が彼を威圧するのか、千晶さんは「はいはい、降参〜」と小さく手を上げた。

「…郭哉、戻ろう。俺達受験生なんだからな?」

「おっと、熱が有る子を引きずり回しちゃダメだよ〜?」


茶化すように笑う千晶さんに、桃耶は横目でまた睨み付ける。

「…出席で評価は変わるんです。…校内で生徒引っ掛けるようなマネしないで頂けますか?」

「……ふーん、」


何故か、品定めするように桃耶を見ていた千晶さんは、ひとりで「なるほど」と頷いた。

「ま、僕もレポート出さないといけないですから、ここらでおいとましますよ〜。カグヤ様、お大事に〜」


「あ、どうも」


「それと、これ借りてる部屋の住所ねー。休日に来てくれても大丈夫だから〜」


自らの手帳から、住所らしきものを差し出すので受け取ると、あっさり千晶さんは去っていった。

手元のメモを確認しようとして、

「…要らないだろ、」

「あっ」


桃耶がメモを取り上げて、簡単に破り捨ててしまった。廊下に捨てないあたりが優等生。


しかし…


「シューパイぃい…」


そう、それが残念過ぎて……

…ん?



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