ある夜の秘恋の噺
2
はぁ…テンションはがた落ちだ。これの為に学校来たのに…。
「もう帰りたい…」
「あー、じゃあ一緒に帰りましょうか?」
ぐったりとした俺を支えながら、楽しそうに笑う千晶さんは教育実習生とは思えない発言をした。それは無理でしょう、と言う俺に。
「それこそ、陰陽的な何かで出来ますし?」
ひらひら、と紙の人形を見せつける。それ、なんか見たことある…!
「カグヤ様、熱有るんでしょう?なんなら今借りてるアパートのが、竜友さん所より近いですから〜……僕の部屋、来ます?」
「……、」
なん、だろう。この胡散臭さ。
「あ…っと、」
「…そんな必要ない、」
「トウヤ、」
ぐいっ、と腕を掴まれてそのまま引き寄せられる。
追いかけて来たらしい桃耶は、俺を支えながら千晶さんを睨み付けた。
桃耶の身長はデカいけど、流石に千晶さんよりは低い。それでも鋭い視線が彼を威圧するのか、千晶さんは「はいはい、降参〜」と小さく手を上げた。
「…郭哉、戻ろう。俺達受験生なんだからな?」
「おっと、熱が有る子を引きずり回しちゃダメだよ〜?」
茶化すように笑う千晶さんに、桃耶は横目でまた睨み付ける。
「…出席で評価は変わるんです。…校内で生徒引っ掛けるようなマネしないで頂けますか?」
「……ふーん、」
何故か、品定めするように桃耶を見ていた千晶さんは、ひとりで「なるほど」と頷いた。
「ま、僕もレポート出さないといけないですから、ここらでおいとましますよ〜。カグヤ様、お大事に〜」
「あ、どうも」
「それと、これ借りてる部屋の住所ねー。休日に来てくれても大丈夫だから〜」
自らの手帳から、住所らしきものを差し出すので受け取ると、あっさり千晶さんは去っていった。
手元のメモを確認しようとして、
「…要らないだろ、」
「あっ」
桃耶がメモを取り上げて、簡単に破り捨ててしまった。廊下に捨てないあたりが優等生。
しかし…
「シューパイぃい…」
そう、それが残念過ぎて……
…ん?
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