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ある夜の秘恋の噺



結局、俺はその他の授業を眠って過ごしていた。
後で聞いた話によると、桃耶が教科担任にわざわざ説明してくれていたらしい。ありがたや。

が、しかし。


「……っ、シューパイっ!」


数えていたチャイムの音で、飛び起きた俺は倦怠感に打ちひしがれながらも、廊下を駆け抜ける。
遠くで桃耶が「危ないって!」と叫んでいるがそれどころじゃないんだってば。


この曲がり角を曲がれば、購買のある道に、

「わっ、と」

「…っ!!」


ぼふん、と。正面から誰かの胸に飛び込んでしまった。
…ん?胸?

こんな高い位置に胸って事は、先生?


慌てて飛び退こうとすると、何故か肩を掴まれて顔を覗き込まれた。

気まずいながらも、その顔を確認すると、


「……あ、千晶…さん」

「やっぱりカグヤ様じゃん、大丈夫?お怪我は…」

いやいやいや、


「なんで、千晶さんが此処に?まさか陰陽術的な…」

俺の考えを撃ち砕くように、千晶さんは吹き出して「可愛いなぁ」と頭を撫でてきた。辞めてほしい。恥ずかしい。

そして、何やら首に掛けていたらしい証明書を見せつけられる。

「今、実習中なんだよね。ほら僕一応教職に就きたい人だから?」

「…教育実習生、ですか」


言われてみれば、スーツ着てるし。この人大学生って言ってたし。納得納得…


「…でさ、カグヤ様?」

「……はい、?」



「なんで急いでらしたんですっけ?」

千晶さんが笑いながら俺に尋ねる。一瞬、訳が分からなくな……


「……はっ!」


俺のシューパイ…!


千晶さんをよけて、購買を覗き込むと。
売り切れ、の文字が「いや見えない見えない見えない見えない」
「カグヤ様怖いんだけど!大丈夫?なんか熱っぽいし〜……保健室連れて行きましょうか」

何故に耳元で囁く…!

「耳っ!遠くない、まだ!」


「そういう意味じゃないんですけどねぇ」


残念そうに笑わない!




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あきゅろす。
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