ある夜の秘恋の噺
風邪ひいた
結局、眠りは浅いまま。
俺は見事に熱を出して朝を迎えてしまった。
***
「39度ー」
体温計が知らせる俺の異常を、ピッと早々と消し去った。
手が早い事に、お粥を作って持ってきた竜友に「37度だぜっ」と伝えたら頷きながら、
「郭哉の嘘は分かり易くていいな」
と布団に戻されてしまった。ちょっと待とうか竜友。
「嘘じゃないんだ、ただ今日は金曜日限定シューパイが購買で絶賛発売中だから行きたい訳じゃないんだからね!」
「はいはい、桃耶君に頼んでおけばいいだろうに」
冷静に俺の服を脱がせて、汗を拭いていく竜友はお粥に葱を散らしている。
因みに辰壬さんは興味深そうに部屋の端っこでこちらを見ながらフレンチトースト頬張ってる。
「お粥とフレンチトースト…?!竜友、カロリーに差が有りすぎる…!ズルい、俺もふわふわフレンチトーストが良い。お粥とか塩気無いと食えない」
「梅干し入れてある」
「いただこう」
早く言えばいいのに竜友さんたら。たまにはこういう飯も有りかなと思いながらちびちびお粥を平らげて。
「行ってきまーす」
「いってらっしゃらない、」
ずるずると引きずられて布団に戻されてしまった。竜友このやろー。
無理やり毛布かけられて、抵抗していると、辰壬さんがいつの間にかそばに来て「ごめんなさい…」
としょんぼりし出した。
「風邪ひいたの、俺のせい…」
「いや、まぁそうではあるけど」
むしろなんで風邪引いてないんだよアンタは。と、いう俺の視線に気付いたのか辰壬さんは何て事も無いように
「水の眷属、だから」
と言って俺に擦りよってきた。
「水の眷属?」
「そう、だから平気なの。水の中、俺強いよ」
「…だから、川に居たんですか」
「うん」
心配して損したのは初めてだ。けれどまぁ、連れ帰るのが目的だったんだから問題はないけど。
そんな時、軽快なチャイムの音が鳴り響いて来た。
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