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ある夜の秘恋の噺



「…だからと言って、郭哉に噛み付く事はないだろう?」


風呂場の戸はいつの間にか開けられていて、そこに竜友が仁王立ちしているではないか。
見てたなら早く助けろよ、と言いたい。


「竜友には、関係ない…!カグヤを」

「だからと言って、その行動は嫌われるだけだ。なぁ郭哉?」

「え、」


竜友は視線で俺に言えと訴えてくる。


「……キライ」

「か、カグヤぁ…!」


叱られた犬みたいに、泣きそうになる辰壬さん。しかしここで甘くしては駄目だ、前にトウヤもそう言ってたし。(トウヤの家では犬とインコとキツネザルを飼っているらしい)


「郭哉、バスタオル」

ぽん、と竜友が投げてきたバスタオルで頭を拭くと、未だに俯いて落ち込んでいる辰壬さんの頭もついでに拭いてやった。
わしゃわしゃ、としてみると案外気持ち良さそうに体を委ねてくる。

「…もうこんな事しないで下さいね?」

「……善処は、する」

なんでそんな難しい言葉知ってるんだよ、まずはその拙い喋り方なんとかしろよ、とか思ってない訳じゃないが。

「…明日も学校ですから、寝ましょうね」

「……ん、」


頭を、俺の肩に預けて。辰壬さんは落ち着いたように頷いた。

本当なら暖かい風呂に入りたかったけど、辰壬さん絶対離れないから今日はもうパス。
二人共、シャワーでずぶ濡れの服を着替えて、洗濯機に突っ込んだ(せっかくトウヤに持って来て貰ったのにな)


***

「消灯ー…したいんだけど、」

「…うん」


「電気けしたら、なんか起こりそうなんですが」


「…気のセイ」




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