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ある夜の秘恋の噺



初対面なのに、そうではないと彼らは言う。

俺は、なんとか腹のものがせり上がって来ないように頑張っていた。


***


「まずは、一般的に『かぐや姫』古典なら『竹取物語』はご存知ですかね?」


知ってる。中学の古典でやったし、頷いた。

「では、話の結末も?」


…ちょっと悩んで、頷く。



「かぐや姫は、月に帰った」


「んー、実にシンプルですが良い回答だねー。そうですね、昔話だったら正解です」


千晶さんの笑顔に、何か黒いモノが混じった。
俺知ってるよ、こういう人を腹黒いって言うんだ。


「けど、事実はだいぶ違うし血なまぐさいよ」


楽しそうに話す千晶さんをよそに。俺の頭の匂いを嗅いだり、首を舐めたりしている辰壬さんは、その話題になった途端に体を固くした。


「……だめ」


「…辰壬さ、

「また、連れて行かれる…!カグヤ!駄目、行かないで!独りにしないで、カグヤ!嫌だ…!」

…落ち着いて、下さい」



ヤバい、口の中に胃液が。




そんな俺を見計らってなのか、千晶さんが本気で、俺から辰壬さんを引き剥がした。辰壬さんの爪が皮膚に刺さり、肩に血が滲んだ。痛い。


「取り乱すな辰壬、見苦しいよ」

覆い被さるように、千晶さんは辰壬さんを抑え付けている。辰壬さんは、まるで敵でも見るような憎しみの籠もった目で千晶さんを睨みつけていた。


「黙れ、黙れ…裏切り者…」


「それは、昔の話でしょうに?1000年以上前ですよ?」



1000年以上…?




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