君がための愛を! 進ずれども 自分の姿が、異人のようだと知った日。――――私は久しぶりに織田社長に出会ってしまった。 帰って来たばかりらしい織田社長は真夜中に外に出ようとしていた私の首根っこを、ヒョイと掴んで屋敷へと連れ戻した。 いや、 投げ飛ばされた。 「…!いた…!」 「…ふん、誰の断りをもって外へ行く?」 「……、」 ネグリジェの裾を掴みながら、立ち上がった私は織田社長を見上げながら、睨んだ。 「…私、は……異人だか、ら……おだ、社長の…」 「のろいわ、」 べし、と頭を鷲掴みにされて。私は「うわぁああぁ」と呻いて暴れるが織田社長はもろともしない。なんで。なんで。 「…我が前では、此の国も彼の国も同じ事よ」 「…?」 手を離されて、また見上げようとすると。とても近くに顔があって本当に驚いた、死んでしまうかと思った。 織田社長は、またいつもの不敵な顔をして。凶悪な笑みを浮かべていた。 「我は第六天魔王…織田信長ぞ。故に民も異人も世の全てが、我が前に平伏すことが世の理よ」 「…?」 難しい、事を言う。 けれど、なんとなく。 「…ありがとう、」 「…むぅ」 織田信長は、唸ると何故か足早に去って行ってしまったけれど。 なんとなく、励まされた気がしたから。ありがとう、と。 「…気に入りませんね、」 「…っ、」 ひやりとした悪寒に、背中が凍る。真っ白の人が私の首に指を這わせていた。 「信長公にお言葉をちょうだいするのですら、恐れ多いと言うのに……」 「はい、止めなよ」 あ、まただ。 慶次さんに釘を刺されて、真っ白の人は名残惜しそうに暗闇に溶け込んで行った。 あの人は、本当に人間なんだろうか…。 「あれ、遠梨……いい事でもあったのかい?」 「…?」 ランプの灯りで、慶次さんの顔が微かに見える。 「なんだか、嬉しそうな顔をしてるからさ」 ◇◆◇◆◇ 「あぁ…憎い……寂しい……」 暗闇から、声が響く。 「私を……もっと……見て下さい…」 暗い暗い、闇の中で。 紫の唇が笑った。 どうすれば、なんて。 簡単だ。 「…あぁ…そうですね……」 他の物は目に入らぬように、 お片づけしなくては…ね? [*前へ] [戻る] |