君がための愛を!
見しやそれとも
あの、綺麗な人の。
まるで品定めするような視線が怖かった。それを慶次さんに言うと、怖い顔をした後に「大丈夫だから」といつものように笑ってくれたから。
だから、きっと大丈夫なんだと信じていた。
◇◆◇◆◇
「織田財閥のやり方は許せないな!」
「あぁ、全くだぜ!」
「……っ」
慶次さんと街を歩いていると、信長社長を悪く言う人達が居た。よくわからないけれど、彼らは怒っていて怖いので私は俯いて歩く。
「…遠梨、前をちゃんと見て歩きなよ」
「…けいじ、さん」
繋がった手が、固く固く結ばれた。暖かくて、しっかりと私を捕まえた手はとても優しい。
「…世の中にゃ、たくさん人が居るもんだからさ。みんながみんな、魔王さんを好きな訳も嫌いな訳ないだろ?
それに、遠梨は魔王さんが酷い奴じゃな……いとは言い切れないけど、まぁ良い所もあるって知ってる。なら、それでいいんじゃないかな」
「…でも、」
「それで、あんたが負い目を感じる事はないよ。…子供は飯食って、喧嘩して、寝るのが仕事なんだから!」
私を元気付けるように、芝居がかったように話す慶次さんを見上げて居ると、ため息が後ろから聞こえた。
「それは、君のしてる『仕事』じゃないかな?……彼女は淑女なんだから」
「…っ!」
くすり、と笑って。
上品さを感じさせる和服に身を包んだ、あの時会った綺麗な人に驚く私を余所に。
慶次さんが、私の前に出た。
「…何しに来たんだよ…!」
「別に?君に用があった訳じゃないよ。僕は…そこの彼女に興味があってね」
声だけでやりとりが聞こえて来る。
「だったらお断りだ、遠梨とアンタが話す事はないよ」
帰るよ、と引かれる手が痛い。チラッと振り返ると、あの綺麗な人がひらひらと手を降って笑んでいた。
そして、男の人にしては綺麗な唇を動かして。
「ご両親の事、興味ないかな?」
と、呟いたのだった。
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