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君がための愛を!
相思わぬ




浅井さん達が、しばらく屋敷に滞在するらしく織田邸にはピリピリとした緊張感が走っていた。
かくいう私も、長政さんに会うのが怖くて部屋から一歩も出られない日々が続いた。


毎日、慶次さんがご飯を持って来てはくれるのだけど心配事があっては食事も喉を通らない。

◇◇◇◇◇


そんなある日、織田社長の妹…長政さんの妻でもある、お市さんが私の部屋を訪ねてきた。

まつさんが、実に嬉しそうに茶会の準備をするので断りきれずに部屋でアフタヌーンティーとやらを頂いて、お互い黙り込んだまま時が過ぎていく。


「…ごめんなさい」

沈黙を破った彼女は、最初に謝罪を口にした。


「あなたを、怯えさせるつもりはなかったの…ただ、長政様は…優しい人だから…」

どこか遠くを見るように、お市さんはうっすらと笑う。

「あなたに…謝っておいて欲しいって…長政様は言っていた。市には…兄さまを止める事が出来ないから、長政様は兄さまを止めようとしているの…」

「…?」

お市さんの表情が曇った。


「…うつつを生きるのに、義も虚も要らない……覇道を進めば、踏み潰した民草が恨みやる……兄さまのしている事は、それと一緒……」

難しい言葉だったけれど、なんとなく織田社長が悪い、のだろうかと感じた。
けれど私は、仮にも命を救われた身だ。


「…いじ、め…ないで…!」

「苛める?市が…?兄さま、を……?」

信じられない、というように目を見開くお市さんを見つめながら頷いた。
それでも織田社長は、

「いい、人…」


「…そう、…そうなのね…」


お市さんが、ふわりと笑う。
私は涙ぐんで、それでも頷き続ける。

わかってた。

私が知っている事は、織田社長の一辺でしかなくて。
私は子供だから、周りの景色なんてぜんぜん見えなくて。

なのに、私の中にある織田社長は怖いけれど強い人で、憧れて、だからだから、

「いい、人な…の…!」

「…うん、……うん」


静かに頷くお市さんは、優しく私の頭を撫でて微笑んだ。





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