君がための愛を!
知る人ぞなし
声が出ない、恐ろしくって声が出ない!!
ニタニタと笑うような、真っ白の人の目の中で竦み上がった私は。
逃げ出す事も叶わずに、
実にあっさりと、
「あぁ…その脅えきった目…っ!ぞくぞくしますよ…」
「…ぃ、…」
人差し指が、私の首に触れるか否か。
「…こんな時間に、何やってるんだい…明智さん」
慶次、さん。
彼の静かな、しかし殺気を孕んだ声に指の動きが止まった。
「…あぁ、あなたですか…」
実に興味なさげに。『明智さん』と言われた人は彼に向き直って、視線を逸らす。
怖くて、怖くて。
動けない私と、慶次さんの目線があった。途端に安心感に包まれて泣きそうになる。
「…おいで、遠梨」
「…!」
手に持ったランプを、床に置いて。慶次さんがしゃがんで、微笑んで手招いた。
それに対して、明智さんがまた厭らしい忍び笑いをした。
「おやおや、随分と過保護じゃあないですか?…私はただ『番犬』として、屋敷を見回ってただけですよ?」
「なんとでも言いなよ、」
しゃがんだまま、明智さんを睨みつける慶次さんの目には嫌悪感のようなものが見えた。
なんとか、立ち上がった私は。
ヨタヨタと慶次さんの方へと歩み寄る。
近くまで来ると、彼の長い両腕が私に絡みついて、あっと言う間に抱き上げられてしまったのだった。
わぁ、高い。
「…魔王さんから、この子つきの執事になれって言われてるんだ。…女を守るってんなら、喜んで馳せ参じるさ」
楽しげな声音だけれど、慶次さんは今どんな表情をしてるんだろうな。
やがて、明智さんはつまらなそうに首をすくめて、
屋敷の暗闇に溶け込んで行った。
◇◇◇◇◇
「…さて、なんで抜け出したりしたのか話してみなよ?」
「……け、ちさ‥ん」
「けち?ケチ?」
「…あ、けち」
「ああ、あの人か…。あの人はなんというか、変態というか…。なんでも、『放置ぷれい』ってやつの為に犬小屋に住んで、」
「失礼ですね、『放置プレイとド鬼畜、犬プレイ』です」
「……」
「……?」
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