君がための愛を!
たえねばたえね
それから、パーティはうやむやになってしまって。
私は初めてのベッドに寝っ転がりながら、眠れなくて眠れなくて…
深夜の、織田邸を徘徊する事にした。
◇◇◇◇◇
白いネグリジェでふらふらと、窓から入る月明かりを頼りに歩く。
怖くないのかと、不思議に思われるかもしれないけれど。
私が昨日の今日まで生活していた場所を思えば、身の安全と呼べば人が居る安心感に今は包まれている。
大丈夫、大丈夫。
洋館の中を歩くと、生活音が聞こえて足を止めた。
規則的に並ぶ扉の隙間を覗いてみると、誰かが寝ていた。多分だけど、蘭丸くんじゃないかな。
次の扉は、灯りが漏れていたから慎重に覗く。
「……!」
床一面に、銃の部品が散らばっている。そのひとつひとつを眺めながら、部品を拭いている濃姫さんが居た。
見ちゃいけない気がして、慌てて逃げ出す。
次、次は誰かなぁ…
ロビーに降りてくると、どこかで言い争いをしてる声がしてそちらに向かう。
あぁ、ここは確か『客間』って濃姫さんは言っていた。
灯りはついているので、また慎重に覗いてみるとパーティの時に来た……浅井さん達が織田社長と言い争っていた、むしろ浅井さんがひとりで叫んでいるような状態。
…あの人怖いな、
私を否定するような目で見ていたから。
きっと今も、そんな話をしてりんだろうな。
耳をすまして、なんとか話を理解しようとするけれど、悲しいかな浅学な私には何の話か全く分からないのだ。
「義兄上!なぜお分かり頂けないのですか!他を支配し、踏み台にしてまで会社を大きくして、一体何を目指しておられるのか…!」
「……喚く、か……鳴かずにいれば、撃たれぬものを…」
「会社とは正義と人によって成るのだ、なのに兄上はそのどちらとも潰してしまおうとする!これでは、部下に信用厚き豊臣が独立を成した時には、皆引き抜かれて行くのは目に見えている!」
「謀反には、滅する事で断罪とす」
織田社長の表情はいつもと変わらないのだが、なんだか怖い。浅井さんも、怖い。
「権力で押さえつけて、人を人して扱わぬその行為…!それが文明開花を成した世で行う所業とは、とうてい思えぬ…っ!」
「…貴様も所詮は、人の子…覇道を行くは、人では辛き事この上なし、なれば」
かっ、と織田社長の目が見開かれた。
「人を逸脱し、魔王と呼ばれるが似合いぞ!!ぬはははははハハっ!」
「兄上っ!」
声高々に笑う織田社長を叱りつけるように浅井さんは立ち上がって、そして、
「覗き見、だなんて…趣味がよろしいようですね…」
「…ひぁっ!!」
悪寒、
鳥肌、
不快、
ぞぞぞっ、と地を這い上がってくるような嫌な気が体を包み込んだ。
クククっ、
笑っている。
私の背後の人物は、
「いけない子には、おしおき…ですよ?」
真っ白だった。
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