朔の夜に咲く 1 【奥州】 「……なんて言った」 あぁあ!英語の後にもう一度日本語で言い直してくれた! いや、完璧に怒ってるんだよね!分かります!分かりたくねぇ! 「…返答によっては、お前を縛っておかねえといけなくなる」 「え、何プレイ」 「ふざけるなよ?」 「……」 あはは、死にそう。視線で人って死ぬんじゃないかな! けど、ダメだ。ちゃんと言わなきゃ…!! 「…家康には、助けて…(あれ、助けてもらった?いや、慶次にも迷惑かけた?)…もらったので、あんな怪我のまま…」 「徳川も一武将だ。てめぇに心配される事は何もない」 小十郎はっきり言うなぁ… は、いかんいかん。 「いや、でも心配するかもしれませんし」 「咲耶」 筆頭が、あぐらの上に頬杖をついてーー名前を呼んだ。 「……本当に、受けた恩を返すだけなんだな?」 「え、はい(即答)」 咲耶の返事に、気分を良くしたのか。筆頭はニッと荒々しく笑った。 「…その返事は上出来だ」 そう言うと、おもむろに筆頭はーー咲耶の耳元に顔を近づけ、「but、徳川の野郎は名前で呼ぶなよ」と囁いた。 「う、ぇ、なんで」 うろたえる咲耶に、筆頭は妖しく笑いかけた。 「…理由は、自分で考えてみな?」 そして、離れていく筆頭の気配。ーーしかし、 「上手く答えれたら…… 褒美をやるからな?yousee?」 「…ぐはっ!」 ブシャッ。 久しぶりに、鼻から大量出血しました。O型…どなたか、O型の方はおられませんかーー 「お言葉ですが、政宗様」 小十郎は、渋い顔をしたまま…咲耶と筆頭を見た。 「この小十郎、徳川の元に政宗様が参られる事には賛同しかねます。その童は、戦う力もない……それなのにどうして、この奥州より三河へと無事に行かれましょう?」 一理ある。 けど、私は行かないといけない。 話の都合上……も、有るけど! そうだ…私は『彼』に会ったんだ。この身は斬られてしまったけど。『彼』は、まるで自分が斬られたみたいにーーーー顔を歪ませていたんだ。 何もない荒野で、泣いていた『彼』を思い出す。 「…私は、行きます」 「咲耶、お前は…!」 狼狽した小十郎が、咲耶の両肩を掴んだ。 「…ありがとう、心配してくれて」 「……」 「ありがとう、小十郎…」 小十郎は、何かを言いかけてーーバツが悪そうに、咲耶に背を向けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |