始まりの場所へ1
半壊したポットから、スタンとディムロスを抱えて外に出ると辺りは一面真っ白の雪景色。やっぱりファンダリアに墜ちたみたいだな。
『スタン!おい、大丈夫か!!』
スタンは落下の衝撃で気を失ったみたいだけど、ポットに使われてた緩衝材のおかげかお互いそう酷い怪我は負ってなかった。
……とはいってもやっぱ心配だから、ちょっとばかり確認。
「……大丈夫。所々打撲はあるけど、骨とか内蔵とかに異常はないっぽい」
『そうか、無事か……』
「もう、ディムロスって意外と心配性だなー。やっぱり突撃兵も味方には優しいのか?」
『失礼な!私だって相手を心配する事くらい……………』
「どうした?」
スタンに俺が付けてたマントを被せながら会話していると、不意に相手の声が止まった。何だ?俺何か言ったか?
『私の声が聞こえているのか?』
……………あ。
「うん」
そういや言うの忘れてたし。
『なぜもっと速く言わない!!』
Σうおわぁっ、ディムロスの怒鳴り声が耳に響く……。いや、この場合直で頭か?
「べ、別に忘れてたわけじゃないぞ。ただタイミング逃したっていうか、言う暇がなかったっていうか……黙ってた方が後の反応面白そうだなって思ったっていうか……あ、」
『ほう……面白がっていたのか……』
「ちょ……ゴメンって。ホントにすみませんでした(汗)」
何ていうか……マジでオーラが恐いですからディムロスさん……。
『……まあいい。それよりえらく私の事に詳しいな。突撃兵の異名など、あの頃でさえ地上軍基地にいる者しか知らなかったというのに』
ふぅ……どうやらディムロスの怒りは去ったようだ。
俺は、このままだと凍死すると思って、どこか人のいる所へ行くためにスタンを担ぎ上げた。
「天地戦争時代の事を調べれば、あなた方ソーディアンチームの情報は嘘もホントもそこら中にゴロゴロ転がってますからね。ディムロス=ティンバー中将閣下」
この世界に来てから、俺は記憶喪失を理由に城の書庫でありったけの文献を読みあさった。だからこれはホントの話。
ゲームのようにリアルではないけど、その時代の状勢、人民の生活、そして戦後のことが詳しく書かれていた。
『そうなのか?……なんだか妙な気分だな。自分の名が後世に伝わっているというのは』
「光栄な事じゃん」
『確かにそうだが、それを自分が実際に耳にするというのは、な……。ところで、他にどんな事が記されていたんだ?』
うーん……正直に話してやるのは構わないんだが、それじゃあ面白くない。俺が。
「ディムロス中将とアトワイト大佐の恋愛模様とか?」
『………』
「………」
や、やべぇ、フリーズしちゃったよ。ダメだ……笑える……。これでディムロスが人間の姿だったら俺、確実に笑い過ぎて死んでるし。
『………(沈)』
でもこれはさすがに憐れ過ぎるぞ。仕方ねぇ、ホントの事ばらすか。……半殺し覚悟で(汗)。
「悪ぃ、今の冗談だから」
『シェイドーーーッ!!』
いーじゃん、アトワイト本人の前で言うよりマシだろ?今なら確実に守銭奴というオプション付きだし。
と、しばらく延々と怒られ続けて、ようやく気がすんだのか静かになったディムロスがふと俺の名前を呼んだ。
『……どうしてさっきはアトワイトと私が、その……こ、恋人同士などと……』
うわ、可愛い反応。なにどもってんだよ前線部隊隊長が。
「ただのカンだけど?」
そう言ったらまた黙り込んでしまった。まだ怒ってんのか?ソーディアンって表情変わらないから、イマイチ何考えてんのか分かんねーんだよなぁ……。その分オーラ、ってか雰囲気でつかむしかないし。
で、今のディムロスの雰囲気は……疑い?
『シェイド、妙な事を聞くが……お前は私と会った事はな…「どうしたんだ、君達?」
ディムロスの声と被って、誰かがこちらに声を掛けてくる。そいつは、10メートルほど先からこちらを見ていた。
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