カイル達がシェイドの後を追って件の大木のところに着いた時、そこには異様な光景が広がっていた。

「一体何なんだよこのシュールな光景は」

シェイドが担いでいたあの木はどうやら地面に落ち着いたらしく、地面に根を下ろしてその巨体を天高く伸ばしている。のはいいのだが、その隣。
地面から青い頭だけをひょこりと出した誰かが、すぐ横にしゃがみこんだジューダスに突かれているなんて誰が予想できただろう。いや、むしろ想像したくないのが本音だが。

「よくぞ聞いてくれたロニ君!これはだな、坊ちゃんと俺による初の共同製作」
「生ゴミを埋めただけだ」
「ヒドイ!俺って素材は限りなく人間に近いけど、土に還るかわかんないんだぞ!こんなの埋めたら環境に悪い!」
「え、そっちなの?」
「シェイドって、生体金属とか電子回路とかよくわかんない物質とか、ポリエウレタンとかアクリルとか絹100%でできてるもの」
「あれ、結論から言うと俺って絹なのか?」
「生体金属とかその他諸々は一体……」
「それって、レイスを原料に洋服が作れるってこと!?」
「リアラ、すごく表情がキラキラしてるよ」
「好奇心に満ち溢れてるなあ」
「ひ、否定しきれん……」
「ていうか、こんな軽いノリで流していい話だったのかな。何気にシェイドの古傷を突いているような」
「発端はアイツなんだから問題ない」

きっぱりと言い切ったジューダスは、好奇心から近寄ってきたらしい街の子供達にシャーッ!っと威嚇して遊んでいるシェイドと、それを見て笑い転げているカイル達に苦笑する。

「前に旅をしていた頃は、シェイド自身の過去なんてかけらも話しだそうとはしなかった。それが今では」
「見事にネタになってますね」
「複雑な心境であることは否定しないが……いい傾向じゃないか」
「シェイドは変化を恐れてましたけど、色んなものがゆっくりと変わっていくように、シェイドもちゃんと変化を受け入れてくれたんですかね」

シェイドも、坊ちゃんも、皆も、もちろん僕も。
そう言ったシャルティエの表情なんて、ソーディアンとしての付き合いが長すぎたためかどうにも見慣れなかった。千年前だってどこか控えめだった彼が、まさかこんな明るい笑顔を浮かべる男だったなんて。果たしてかつての、スタン達と旅をしていたリオン・マグナスだった頃の自分が想像できただろうか。
と、そこまで考えたジューダスは小さく首を横に振った。

「どうしたんです、坊ちゃん?」
「いや……僕もそろそろ覚悟を決めなくてはな、と」
「そろそろ、会いに行きますか」
「行方をくらましていた馬鹿も見つかったことだしな」

ふと視線の先、子供達に突きまわされていたシェイドが、何かを見つけたように「あっ」と声を上げる。
いい加減に掘り返してやった方がいいだろうかと思った次の瞬間、肩近くまで埋まっていたはずのシェイドは、事もなさ気にずぼっと這い出してきた。
相変わらず非常識である。

「踏み締めてかなり地面を固くしておいたはずなんだが」
「まあシェイドですから。ていうか坊ちゃん、何かストレスでも溜まってたんですか?」

呆れた顔付きのジューダスが溜め息をついたとき、シェイドは全身泥だらけ土塗れになりながらも元気な笑顔を向けて、一人の老女に大きく手を振ったのだった。


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