幸せの定義1
ダリルシェイドへと戻ってきた時、俺はふと。

「な、何でお前がここに!?」
「エルレイン、あなた……!」

最重要懸案についてを話してなかったなーということに思い当たった。
警戒心も露に武器を構えるカイル達。その視線の向こうにいる相手は、妖艶とした表情を浮かべて右手に力を凝縮させたダブルセイバーを具現する。
やっぱり普通に力は使えてるのかと再確認しつつ、俺は溜め息を一つ吐かせてもらった。

「戦う気はないくせに敵意だけむき出しにすんじゃねーよ」
「ちょっと空気を読んでみました」
「読めてねええェェ!!この場合一番最初に見るべきは俺の様子だろうが!カイル達に合わせてどうすんだよ!」
「再会を果たした宿敵同士としては、この雰囲気の方が似合うと思いません?」
「え、あえてそこなわけ?そんだけの理由?」

とりあえず俺は木を抱えながらも脱力して座り込み、ジューダスとシャルティエ、そしてぽかんと阿呆面晒したままのロニに向かって縋るような視線を向けた。

「もう俺には無理です……これでもけっこう頑張った方なんだけどエルレインさん強すぎる。暖簾に全力で突撃してぬかに勢いよく頭から突っ込んじまった気分」
「シェイドをここまで疲弊させるなんて……」
「しかもまさかのコイツとはな」
「って、エルレイン!何でここにいるんだよ!しかも完璧ボケの役回りでよお!?」
「あれ、俺に対するツッコミはなし?華麗にスルーか?」

うっかり話し忘れてたのは本当に申し訳ないんだが、むしろその詳細は俺の方こそ聞きたいくらいだ。
とりあえず、ツッコミ要員が増えた事に俺は安堵せずにはいられなかった。その分ボケ側の人間も増えているところには触れないでおこう。

「とりあえず、俺はこの馬鹿でかい土産を置いてくるからさ」
「その木、お土産だったのね……」
「詳しい話はそこの天然入りすぎてるお姉さんに聞いといて」
「……いきなり噛み付いたりしないか?」
「坊ちゃん、犬じゃないんですから」
「うん、まあ、噛み付かれるよりタチ悪いかもしんないけど……大丈夫。たぶん」
「……」
「健闘を祈る。後ろでハロルドが片っ端から器材並べてるのにも注意しとけよ」
「は、ハロルド!何する気ですか!?」
「解剖とか実験とか、危ないのは駄目だよっ!」

そりゃもう凄みのある表情で片手にメス、片手にチェーンソーを持った、ジェイソンも真っ青になりそうな威圧感を醸し出してる天才と、それを必死に宥めるゆかいな仲間達、我関せずな聖女さんと、傍観を決め込んだらしい黒ずくめ。
今日を境に何かが変わる、いや、変わったようだと小さく笑みを浮かべながら、俺は街の奥へと歩いて行った。


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あきゅろす。
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