砂漠の真ん中で独り言1
レイスが意識を取り戻した時、寒暖差のあまりの違いを感じ取り、思わず愚痴をこぼしてしまった。

「ったく、何でよりによってカルバレイスかな……わかってたことだけと」

手に触れるのは渇いた砂、頭上には容赦なく照り付ける太陽。
人気もないこんな空間にいきなり放り出されてしまってはたまったものではない。

「皆は……」

気配を探ると、すぐ近くに二人が倒れているのが分かった。だが、あまり状態はよくない。エルレインの戦闘で傷ついている上に、この猛暑の中に放置されているのだから。

「『リザレクション』」

二人の怪我がどの程度かは分からなかったので、とりあえず晶術をかけた。これで心配はないだろう。だが、このままここにいては、日射病や脱水症状を起こしかねないと、レイスはジューダスを肩に担ぎ上げた。

「……っしょっと、軽……」
『うわぁっ!?』

その途端、聞き覚えのある声が頭の中に響く。

「………」
『………』
「………」

一瞬だけ動きを止めたものの、レイスは何事もなかったかのようにロニの体を起こし、さすがに担ぐことはできないので、少し引き摺るような形で歩き出した。
さすがに方向感覚がさっぱりだが、まっすぐ歩いていればいずれは日陰にたどり着けるかもしれない。危なそうならこの声が騒ぎ立てるだろうとの、期待もある。

『あの……聞こえてないんですか?』

再びさっきの声がしたが、とりあえず無視する事にした。
ジューダスだって自分がソーディアンであるシャルティエを持っているとは思われたくなかっただろうし、何よりレイスは人の気配を探るのに全神経を集中させていたから構っている余裕などなかった。

『聞こえてないんですか?聞こえてないんですよね?なら喋っちゃいますからねっ!?』

(うるせーな、いいから勝手に喋っとけよ!)

ようやく微かにだが人の気配を探りだし、そちらに向かって歩を進める。だが、シャルティエはとどまる事なく話し続けていた。

『はぁ、ここのところずっと喋れなくって、本当ストレス溜まっちゃうよ……それでなくても坊ちゃんあんまり構ってくれないし、喋ってくれないから退屈してたのに。カイルの心配ばーっかり。まぁ、僕だってその気持ち、わからなくはないけどさ』
「………」
『それにしても、このレイスって子、女の子みたいに華奢なのに、力持ちだな……ビックリしちゃったよ。軽々と坊ちゃん持ち上げちゃうんだもん。ま、坊ちゃんが平均より軽いっていうのもあるかもだけどさ』

(女みたいで悪かったな)

『そういえば、シェイドも前に坊ちゃんの事、軽々と抱えてたよね……やっぱり、坊ちゃんのウエイト軽すぎるんだよ。もう、好き嫌いばっかりするから……でも、これ言ったら怒るし』

(うん、そこは同感)

『………』
「………」
『……シェイド……』
「………」
『僕、坊ちゃんの事信じて、ここまで付いてきたよ。ためらうなって言うから、シェイドとも本気で戦ったよ。でも……』
「………」
『また先にいなくなっちゃうなんて、酷いよ』
「………」



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あきゅろす。
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