考え事をしながら歩いていたら、いつの間にか開けた所に出て来ていた。そして目の前にはボロっちい小屋。

(何か嫌な予感がするんだよな)

心の中でそう呟いた瞬間、壊れるくらいの勢いで小屋の扉が開き、中から五、六人の見るからに人相の悪そうなムッサい男達が出て来た。

「うわぁ、やっぱりか」
「おい、テメェか!城の客員剣士ってのは!」

俺の素直な感想。ムサっ苦しいなオイ。
ムサい男達は俺の姿を見た時は驚きに顔を引きつらせていたが、俺が一見(あくまでも見た目だけな?そこんとこ誤解してもらっちゃ困る)弱そうなガキだと分かるや否や、馬鹿にしたような態度を取りはじめた。
言っちゃなんだが、雑魚の定番だ。

「なんだよ。ただのお子様じゃねぇか」
「ハッ。こんなひょろっちいのが稀代の天才少年剣士とはなぁ……」
「いや、コイツ女だろ。ソイツの仲間かなんかじゃねぇのか」
「こんな細っせー腕して剣なんか振り回せんのかよ」
「お家に帰ってママに甘えなくていいのか〜?」

無言を肯定ととったのか、俺が客員剣士の仲間だと勘違いされたまま話は進む。
ていうか、ちょっと待てよ?
今このムサい男ども、何か聞き覚えのある単語言わなかったか?
天才少年剣士って…………………………いや、気のせいだな。聞き違いだ。俺は知らない聞いてない。
そんな風に考え込んで、動かない俺の様子を怯えととった男達は一斉に武器を構え、じりじりと近付いて来る。

「なかなかキレイな顔してんじゃねぇか。売りに出せば結構な値になるだろうなぁ」
「そうだな。おい、お嬢ちゃんよぉ。殺さねぇでやるから、ちゃんと俺達の言う事きくんだぞ?」

俺が考え込んでいる間に本人の了承もなく話が進んでいたらしい。こういうのを自己中心的、略して自己中というのだろう。
そうして悪どいセリフを吐きながら腕を掴んできた男の手を、強い力で振りほどく。害悪と断じた相手には自ら正義の鉄鎚を下すべし。
なぜって?そりゃ俺のシンキング☆タイムを妨害したからに他ならんだろ。

「な、おとなしくしてねぇと殺」
「人が考え事してんだからチョットは黙ってろっつーの!さっきからゴチャゴチャうるせーんだよッ!!大体なんなんだそこのオッサン達は。ゴリラの集団か?チンパンジーか?マントヒヒか?もしそうだったら類人猿に失礼この上ないっての。ゴリラの方がまだ可愛い。てめぇらが一人でバナナ剥いて食ってたって誰一人として拍手は送らねーんだよ。わかったら今すぐ謝れッ。生命の進化という感動を与える事も出来ない奴は霊長類全てに土下座しろ、地面を這いずり回る虫のように!!お前らのことはこれから侮蔑と皮肉と嫌悪を込めてゴ〇ブリと呼んでやるから思い残す事無く地の果てへ謝りに逝けーッ!!あと俺は男だっつーの!!!」

なに?思考が飛躍してるって?
問題ないね、世界は俺を中心に回ってんだから。
ってかむしろ、これだけ喋りながらは瞬く間に男達を切り倒したのは、ある意味すごいだろう。と、褒めてくれる奴はいないので、自分で自分を褒めてみる。自我自賛寂しすぎるぜ……。
俺が(喋りすぎて酸欠になっていたため)息を切らせながら剣を鞘に収めた時には男達は完全に倒れ付していた。ザマァ見ろ。

「ったく……何なんだよ。たかがゴキブリごときが人様の思考を邪魔するんじゃねぇっての」

息を整えて、これ以上の厄介な事に巻き込まれないうちにと踵を返した時、ガサガサと草をかき分ける音が響いた。
まださっきの残党が残っていたのかと思って、咄嗟に振り返ると。

(これは………気のせいも知らないも、幻覚も通用しない、か。とうとう年貢の納め時みたいだ)

二次元な世界でとても見覚えのある黒髪の端麗な容姿をした少年が、訝しげにじっとこっちを見ていた。



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あきゅろす。
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