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劣情
1
えー、大変です。
何が大変って、俺、早乙女優、17歳。
健全な男子高校生が先輩、しかも、男に恋をしました。

きっかけはほんとに些細なことだった。
その日俺は新しいクラスで友達もできて浮かれていた。
高校二年とは学校にも慣れてきてなおかつ先輩という立場にもなる皆が浮かれる時期だ。
俺も油断していたのだ。
だからまさか廊下で滅茶苦茶かわいい後輩を見て軟派なんてしてしまったわけで。
しかも、その後輩軟派に応じてしまったわけで。
さらにさらに、そこを後輩の彼氏に見られたわけで。
俺は彼氏君に担がれて体育倉庫に閉じ込められてリンチされそうになってました。

「人の女に手を出すなんて良い度胸じゃないですか、先輩」

彼氏君はいたくご立腹の様子で俺に蹴りを入れた。

「ぐっはっ・・・」
「先輩顔綺麗ですね、その顔なら女が集るだろうに、なんで藍子なんすか?」
「たまたま、だ・・・」
「ふーん、まぁいいか、先輩顔可愛いからさぁ、特別に許してあげてもいいよ?」
「・・・なにを、考えてる」
「ふふ、ねぇ先輩、俺と付き合わない?」

突然の展開に俺の思考は追い付かない。
彼女とられて、頭おかしくなったのか?

「意味が分からないこと言うな」
「えー?藍子を捨てて、先輩と付き合いたいって、ただそれだけの事っすよ?」
「彼女いんだろうが、第一、俺は男だ」
「藍子のことそこそこ好きだったけど、今は先輩にぞっこん?的な?」
「この一瞬でそんな思考になるお前が理解できない」
「いいじゃないっすか、これから知っていけば、俺結構かっこいいでしょ?モテるんすよ?有力株っすよ?」

けられた腹が痛い。
こいつの言うことも理解できないし、帰りたい。

「ほらほら、はいって言わないとこのまま強姦するよ?」
「男相手に勃つのかよ、お前」
「先輩なら勃つ自信あるよ?それにお前じゃなくて潤だよ」
「・・・ちっ、お前の女に手を出したことは謝る、だがお前と付き合う義理はない」

途端に部屋の温度が下がった。
気がする。
潤は無表情に俺を見下ろしていた。
その瞳はただ虚ろで、何を考えているかわからなかった。

「お、おい・・・」

心配になって声をかけると潤は俺の制服を引き裂いた。

「ひっ」

そのまま無言で俺の胸に舌を這わせている。
ぴちゃぴちゃと唾液に濡れる音がする。
気持ち悪い。
生理的に涙が浮かんできたころ、彼が現れた。

「そこで何をしている」

凛とした声が埃臭いこの空間に響いた。
ネクタイの色が彼が上級生だと告げている。
俺は思わず叫んだ。

「助けてくださいっ」

彼は一つうなずくと後ろに控えていたごろつきのような、なんていうか、あの、やくざみたいな人たちに指示を出すと、彼らが潤をとらえてくれた。

「怖かっただろう、大丈夫か?」

俺は必死にうなずいた。
涙がこぼれてきても構わなかった。
彼はそんな俺の涙をやさしくぬぐうと頭を撫でた。

「立てるか?」
「は、い・・・」

これが、俺が先輩に惚れた瞬間だった。
ちなみに後輩はこの後生徒指導室に連行されたらしい。


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