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優しい愛し方
1
「・・・・ふぁ〜、よく寝た・・・・」

朝日がさんさんと大地を照らすころようやく起きた御木は隣で眠る征生を見た。
彼のほほには涙の跡がある。
昨日も静かに涙を流す彼を寝かしつけてから眠った。

あの日。
征生と初めて体をつなげたあの日から、征生が御木を抱くことはなかった。
ただ辛そうに涙を流し、御木を見つめるのだ。
悲しい。
寂しい。
足りない。
と、そういって、ただ泣くのだ。
以前までの二人と違うのは、そんな征生を見て、御木が逃げないことだ。
その感情を、受け止めようと、努力していることだ。

「ゆっくりお休み、不器用さん」

御木は珍しくいまだに眠る征生の額にキスを落とすと支度をして家を出た。

慣れた道を歩きながら御木はスマホで郁に電話を掛けた。
数コール目で応答があった。

「あ、郁?」
『御木、どうした?』
「あのさ、ユキがね、落ち着いたら、郁とまた付き合いたいんだ」
『・・・どういうつもりだ?』
「俺に愛を教えてくれるんでしょ?」
『お前は俺の愛が、理解できなかったから、逃げたんだろ?』
「・・・そう、結局俺は愛されることを恐れてお前からも、ユキからも逃げた、それがどんなに卑怯なことか、どんなに愛してくれた人を傷つけるか知っていたのに・・・・だから、考えたんだ、逃げないで、向かってみようって」
『向き合って・・・征生か、俺か、決めるのか?』
「うん、だから付き合って、俺は、もう逃げないから」
『・・・・わかったよ、なんやかんや、俺お前にべた惚れだし、好きなやつに付き合ってって言われて断るほど性格出来てねーわ』
「じゃ、よろしくね」
『おう』

挨拶もそこそこに御木は通話を切ると、空を見上げた。

「俺も、愛してみよう、愛されるだけじゃなく」

その声音は落ち着いていた。

こうしてまた、三人は歩みだした。
誰かを愛するために、誰かの愛を受け止めるために。
それができるようになって初めて、この三人は幸せになれるのだ。


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