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人間嫌いとサイコパス
10
「べ、紅っ」

「いたいよっ紅っ」


ずんずんと僕の歩調もお構いなしに、紅は先を歩いていく。
つかまれた腕に引っ張られる形で僕は紅とともに家路についた。

腕が解放されたのは家についてから。

「脩、あいつとは二度と関わるな」

いつにもない高圧的な紅の姿に僕はただおびえてうなずくことしかできなかった。

「わ、かった」

望んで関わりたくもない。

「ならいい、俺は用事ができたから出かける、だから」

言葉をそこで区切ると、紅は僕の腕をつかむとベッドサイドにつながっている鎖付きの腕輪をはめた。

「ここから出るな」

「・・・は、い」

僕はただうなづき、紅の後姿を見送った。
紅の様子がおかしくなり、たびたび僕を部屋に閉じ込めるようになったのはこの日からだった。








「政国」

「呼びました?」

「柏 杜季って男について調べろ」

「杜季?そいつ確かこの辺一帯を仕切ってる大株主の名前じゃないですか?」

「はっ、なるほどな」

「どうしたんです?」

「成金に成金呼ばわりされる筋合いはないって話だ」

「いや、言ってる意味が分かりません」

「だからよ、あのくそ野郎が俺の脩を物扱いした挙句、俺のもの宣言しやがった、しかも脩の初めてを食った男と来た・・・・殺すしかねぇ」

「ああ、なるほど・・・いいですね、手伝いますよ、紅一人じゃ少し相手が悪い・・・脩君に無体を働くものは許しておけません」

「一人で十分だ、と言いたいが、言葉に甘えるとしよう」

「素直な人は好きですよ」









退屈だ。
部屋に閉じ込められて三日が経った。
小さいころから部屋から出たことはあまりなかったから、その頃と変わらないと思えばつらくないはずなのに、なぜか歯がゆい。
紅と暮らし始めて知ってしまった生活が僕をおかしくしてしまった。
だから、この部屋から早く出たいなんて考えてしまうのだろう。

「しゅー、ご飯の時間だよぉ」

あのころとの違いといえば、大好きな人がいて、その人が僕にご飯をくれるというところだ。

「今日はハンバーグ作ったんだぁ」

ああ、それから、鎖でつながれていることもだった。

僕がそんなことを考えていると紅の空気が変わった。

「何考えてやがる、脩」

キレている。
こうなった紅はあまり刺激しないほうが身のためだ。

「夕飯楽しみだったから、早く食べたいな、とおもって」

それらしい理由を述べると、紅はいつもの調子に戻った。

「そぉか、じゃあ早く喰べよう!」

「うん」

こうして、歪んだ日常がまた始まる。





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