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人間嫌いとサイコパス
5

『どこいくの?』

『かえってくるよね?』

『あのひとだれ?とうさんは?』

『いたい、よ』

『ねぇ、かあさん』

『かあさん』

『くらいよ』

『こわいよ』

『ね、え、かあさん・・・?』


「う”ぁ」
なんという目覚めの悪さ。
嫌な夢を見た。
思い出したくもない、忌まわしい過去だ。
最近は見なくなっていたのに。
「まったく、今日は厄日だ」
気分が悪い、顔でも洗ってこよう。
僕はそう思い、洗面所に向かった。
ばしゃばしゃと乱暴に洗うと幾分か気分が優れてきた。
鏡に映る自分の顔は酷くやつれて醜かった。
こんな顔、紅に見せたくない。
心配される。
心配される事事態はうれしいが、あんまり紅には心配をかけたくないのが本音だ。
「しゅー」
「うわっ」
鏡に映る紅の姿。
つまりいつの間にか背後に紅がいた。
「なななな、なに?」
「どーしちゃったのぉ?そんなにあわてて」
「べべべべべべ、べつにぃ・・・?」
「ふーん?」
紅は感情の読めないニヤニヤした顔で僕を抱き上げると寝室に向かった。
そしてそのまま優しくベッドに下ろされた。
「ねー、しゅー?」
「・・・?」
「今日は学校ずる休みしちゃおうっ」
「ぇ?」
紅はニヤニヤしたまま僕の頭を撫でた。
「しゅー、顔色良くないしねぇ」
「そ、ぅかな」
「そぉだよー」
「・・・紅が、いうなら」
「ふふ、じゃあ、決定ーっ」
紅は楽しそうに笑った。
だから僕もつられて笑った。

「過去なんて、思い出さなくて良いんだよ」

「ん?」

「なんでもなぁい」

紅が小さく何かいった気がしたが、はぐらかされたので深くは追求するのをやめた。
「そうだ、この前政国来た時に海外のお菓子貰ったんだ、あっちで食べよぉ」
「ほんと?うん、たべる」
「じゃあ、行こう、はい」
「うんっ」
僕は紅が差し出した手を迷うことなく握り締めた。
「良い子」








目の前で嬉しそうにお菓子を食べる愛しい子を見やる。
血の気の失せていた頬には赤みが戻っている。
それを見てやっと安心できた。
脩は時々過去を夢で見て魘される事がある。
俺も人のことは言えないが、脩が魘されているのを見ると可哀想に思う。
しかし、寝ているこの子に俺が出来ることなんてない。
いったいそのことで何度自分を責めたか分からない。
寝ている間は、何も出来ないが、起きたら、俺は看病くらいできる。
この子が辛い事を忘れられるように、尽力するまでだ。
脩はものめずらしいのか、お菓子が好物のようだ。
だから今日も政国から強奪したお菓子でこの子の気を逸らすことに成功した。
嬉しそうに食べるこの子はきっと世界で一番可愛い。
誰よりも愛しい子。
俺も脩も、神には愛されなかったけど、俺が脩を愛してやることは出来る。
そしていつか、脩も俺を愛してくれたら。

そのときやっと俺たちの世界は完成する。


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あきゅろす。
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