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人間嫌いとサイコパス
2
「しゅー?朝だよ〜」
「ん、んぅ・・・後五分」
「駄目だよ〜学校遅刻するよ?」
「んああ、はいはい」

朝、まだまだ寝ていたい気持ちを押し殺して起き上がると、エプロン姿の紅が頬を膨らませていた。
いつもの事なので、それを無視し、リビングへ向かう。
後ろから無視すんな〜とか聞こえる気がするが気のせいだろう。
顔を洗って机につくと、いつの間にか紅が戻ってきていた。

「いっただきまーす」
「いただきます」

最近、暖かい朝ごはんにもこいつと暮らし始めて慣れてきた。
朝誰かに起こされて、朝ごはんが出来ている。
そんな事に最初は感動して、いちいち泣いたっけな。
そのたびに、紅がおろおろしてちょっと楽しかった。
紅は料理がうまい、だからいつも残さずに食べれる。
紅と暮らす前は残飯しか食った事無かったから、出来立ての美味しい料理がこんなに素晴らしいものだとは知らなかった。

「ご馳走様でした」
「お粗末様〜」

朝食を終えて、部屋まで鞄を取りにいって、リビングにもどった。
そこで紅からお弁当を受け取り、かばんに入れる。

「じゃ、いってきます」
「はい、いってらっしゃーい」

挨拶をして、部屋から出た。



此処に紅と暮らし始めてからもう一年になる。
あの後、母親の片づけを手際よくこなしてくれた紅は一緒に住まないかと誘ってくれた。
15歳の餓鬼で、頼る人も居なかった僕はその手にすがった。
もともと戸籍なんか無かったから名前も無かった。
そんな僕に、紅はどうやったのか戸籍を用意してくれた。
あと新しい名前も。
渡嘉敷脩。
戸籍上は渡嘉敷紅の弟になっている。
何故紅が僕に此処まで良くしてくれるのか分からないが、とても助かっている。
だから多少スキンシップが激しくても黙認している。
そういえば紅は何も知らない僕にいろいろな事を教えてくれた。
まずは文字だ。
学校とは無縁な生活だったから識字能力が無かった僕に紅は文字を教えてくれた。
文字さえ覚えればあとは学習するのには苦労しなかった。
そしてついに今年から高校に通うことになった。
ついて行けるか不安だったが、紅とのもう特訓のおかげで何とかなった。
本当にどんなに感謝しても仕切れない。






家に帰ると、紅がニコニコしながら出迎えてくれた。

「さぁ、しゅー、今日はビーフストロガノフだよお」

そして目の前の豪勢な肉料理たち。
きらきらの笑顔の紅。
味は申し分ない。
だが問題はそこではないのだ。
そう、この肉料理は人間の肉が使われている。
もちろん殺してきたのは僕じゃない。
紅だ。
紅は喰人症を患っている。
おそらくそれは紅の出生に関わる話だ。
つまりトラウマが必ずどこかに潜んでいる。
僕も紅も人間が出来ていないんだ。
だからこそ、紅も僕を拾ったのかもしれない。
だが、理由なんかどうでも良かった。
僕は今紅といて、共に暮らしている。
それこそが全てだ。
だから、紅がどんな事をしていても黙認する。
そしてそれに従うのみだ。



「おいしい?」

「ああ、うまい」

「へへ、よかった」





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あきゅろす。
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