[携帯モード] [URL送信]

人間嫌いとサイコパス
1

紅いな。
紅い。
やはり赤は良い色だ。
人間の本能を刺激する色。
そしてどんな醜い者も美しく彩る色。
たとえばこんな、母親だったモノとか、ね。
足元に転がる肉塊に一瞥をくれ、僕は解体作業を終る事にした。
部屋中に赤が散らばっている。
なんて美しい部屋だろう。
さっきまで醜かったこの部屋が、赤に彩られただけで、こんなに美しくなった。
僕はおもわず恍惚とした。

「あっは、良い趣味してるね、君」
「誰」

突然後ろから声をかけられた。
振り向くとそこにはニヤニヤした顔の男がいた。
たれ目の癖に猫のような顔をしている。
世間で言うイケメンなのだろう、この男に僕は見覚えが無い。
警戒心を露に睨み付けた。
まさかコレを解体しているところを見られるなんて。
いや、鍵はちゃんとかけてあったはず、それなのに入ってきたのか、この男。
ますます怪しい。

「そんなに警戒しなくても良いじゃん」
「何のようだ」
「用?んー、用ね・・・良い匂いがしたから、来ちゃった」
「・・・は?」

男は感情の読めないニヤケタ顔でこちらに歩いてきた。

「来るな、殺すぞ」
「君が?俺を?無理無理、あはは」
「んのっ」
「あっはは」

手にしていた包丁を男に向かって投げた。
もちろん脳天一点集中。
だが、男は笑いながら包丁を素手で受け止めた。
しかも指二本。

「だーから云ったじゃん、あんまおいたすると」
「・・・」
「殺すよ?」

男から殺気が流れてきた。
先ほどまでのおどけた空気は成りを潜めた。
僕は殺気をもろに食らいその場から動けなくなった。
蛇ににらまれた蛙、まさにその状態だった。

「なーんてね」

男はまたにやけ顔に戻ると殺気を放つのをやめた。
僕は冷や汗を掻き、その場にへたり込んだ。

「何なんだよ、あんた」
「俺?通りすがりのものです」
「通りすがりの人間が鍵の掛かった部屋に入れるか」
「俺だけ特別♪」
「意味わかんねーよ」
「そんな事よりさー、ソレ、片付けるの手伝ってやろうか」
「・・・・」
「警察にご厄介になりたいなら、手出さないけど?」
「あんた、本当に何者」
「・・・何だろうね、俺もわかんない」

にやけた男は、小さく自嘲気味に笑った。
その姿が、男が本当に自分が何者か分からないのだと伝えていた。
だからなんとなく、男のことが気になった。
本当に、ほんのちょっぴりの好奇心。
僕は立ち上がって男を見上げた。
顔立ちは整っていて、かっこいい。
しかし、その瞳は酷く濁っていた。
この男もまた、僕と同じなのかもしれない。
そうおもうと、不思議と先ほどまでの警戒心が薄れていくのを感じた。

「頼んで良いか」

僕が頼むと、男はやはりニヤケタ顔で、任せて、といった。




これが、僕、脩と彼、紅の出会いである。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!