人間嫌いとサイコパス
1
あれから、杜季さんは干渉してくることはなかった。
だから、学校までの送り迎え、定時連絡、一人で出歩かない、これを守っている限り日常生活を送ってもいいと言われた。
紅の過保護も緩まった。
そして今、僕は学校に戻ってきた。
長らく体調不良で休んでいたことになったのでそれらしく振舞わなければならない。
「渡嘉敷君、体調もう大丈夫なの?」
「ああ」
「渡嘉敷君いないと寂しかったよ」
「ごめんね、心配してくれてありがとう」
当たり障りのない受け答えをしていると見覚えのない生徒が目に映った。
「ねぇ、あの人、誰?」
「ん?ああ、渡嘉敷君いなかった間にね転校してきた子だよ、安斎遊佐君っていうの、おーい、ゆうさくーん」
クラスメイトの女が呼ぶと、遊佐と呼ばれた少年が僕の元まで来た。
「呼んだ?」
「うん、渡嘉敷君とまだ面識ないでしょ?」
「ああ、確かにそうだよね、、俺は安斎遊佐、最近転校してきたんだ、よろしくね、脩君」
優しい笑顔で、挨拶をされた。
その瞳は穢れなく輝いている。
愛されて育ったのだろう。
僕や紅にはない純粋な光が見て取れる。
だから僕は何となく苦手だなと思った。
「何で名前、知ってるの?」
僕が尋ねると遊佐は笑って、君のことが気になっていたからだといった。
僕は曖昧に笑って流すことにした。
やっぱりこの男はどこか苦手だ。
と、思っていたのに。
気が付くと遊佐は僕の傍に来た。
お昼食べようとか、体育一緒に組もうとか。
まわりには遊佐と遊びたがっているであろう人間もいるのになぜか僕のところに来る。
だから、思い切って聞いてみたのだが。
「俺、脩君のこと好きだから」
「・・・・は?」
生来、愛されてこなかった僕は、愛に飢えている節がある、だからだろう、顔が赤くなってしまった。
うっかりうれしいと思ってしまった。
「かわいいな、ねぇ、返事は?」
なぜ付きまとうのか聞いたらいつの間にか告白になっていた。
返事と言われても、僕は恋愛なんてしたことないからわからない。
「告白とか初めてで、わからない」
正直に答えると、遊佐は笑って僕の頭を撫でた。
「モテてるのに気が付かない鈍感な君が愛おしいよ」
「え?」
「何でもない」
「・・・?」
「ゆっくりでいいよ、俺と付き合いたいなって思えたらその時教えて?」
「・・・ああ」
いつの間にほだされたのか、僕は苦手だと思った男との交際を、それでも前向きに検討し始めていた。
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