人間嫌いとサイコパス
8
『ねぇ、しゅー?』
『なぁに、紅』
『外の世界を、見に行こうか』
『外の、世界?』
『そう、この扉の、向こう側の世界』
『行きたいけど、でもでも、母さんが外に出ちゃ駄目だって、外は、お前が居て良い世界じゃないって・・・』
『違うよ、しゅー、外の世界はまぶしくて、それでも空は、花は、大地は、綺麗なんだぁ』
『きれいな、世界・・・?』
『そう、きっとしゅーも気に入るよぉ』
『僕、行っても良いのかな』
『誰もしゅーを拒絶しない』
そんなことさせない。
人間どもはクズだが、そんなことは脩は知らなくて良い。
「・・・夢か」
久々に、暖かい夢を見た。
アレは確か、僕が紅に拾われて間もない頃だ。
右も左も分からない僕に紅はたくさんのことを教えてくれた。
「なつかしいな」
つい一年前の事なのに。
昨日ように思い出せる。
「おっはよ〜、しゅー、起きてるかなぁ?」
「おはよ、紅」
「ん〜、おね坊さんのしゅーが起きてるぅ?いやなことあった?」
「ないよ、良い夢見たの」
僕の言葉に紅は安堵の笑みを浮かべた。
「どんな夢?聞いてもいぃい?」
「初めて外に出たときの夢」
紅は僕の隣に腰を下ろし、続きを催促した。
「僕ね、うれしかったよ、紅がたくさんの事、教えてくれたから」
「しゅーは、初めてが多いからねぇ、教え甲斐があるよぉ」
「えへへ、学校で新しいことを教わるよりね、紅から教わる方が、ほんとは・・・」
「しゅー・・・」
「ごめん、今のなし」
僕はうっかり喋ってしまった失言を無かったことにするために、あわててリビングに向かった。
後ろから紅がゆっくりついてくるのが足音で分かる。
今更どうしようもないけど、わざわざ僕なんかを学校まで行かせてくれた紅に対してさっきの言葉は失礼すぎた。
あー、もう馬鹿かぼくは。
どんよりした気持ちで食卓に着くと、暖かい食事が待っていてくれた。
紅と暮らし始めるまで僕が与えられなかったもの。
「紅、さっきはごめ・・・」
「ねぇ、しゅー・・・学校嫌いなら、行かなくて良いんだよぉ?」
「え」
「俺は学校なんか行ったことないし、家族なんか知らない生活を送ってきたからさぁ、しゅーには普通の生活させてあげたいんだよねぇ」
「違う、学校は、嫌なこともあるけどっ知らない世界があってっだからっ」
「・・・・」
紅は優しく笑ってる。
何でもおみとおしのようだ。
「じゃぁ、今日もがんばらなきゃね、しゅー」
「・・・・うんっ」
それからまた、いつもの日常が始まる。
はずだった。
それは、学校からの帰り道。
いつもの道で。
突然腕をつかまれて、路地裏に連れ込まれた。
「いたいっ離してくださっ・・・・!!」
見上げたその顔は、僕がこの世で一番嫌いな顔。
「杜季さん・・・・」
「生きてたのか、ゴミ」
「・・・・」
「真紀が殺されたそうだな、何故お前が生きている」
「ぁぅ・・・」
「お前を囲ってるあの男は誰だ」
母さんの恋人。
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