人間嫌いとサイコパス
7
朝のHRが始まると、それまで騒がしかった生徒たちが一斉に黙った。
しかしその静寂も、担任の一言であっけなく破られた。
「皆に悲しい、お知らせがある」
「山口美鈴さんが亡くなられた、よって今日は朝のSHRは彼女に黙祷を捧げる事とする・・・」
その言葉にざわつきながらも生徒たちは従った。
僕はというと、美鈴という名前に引っかかりを覚えた。
それは一昨日買い物を邪魔した三人組の一人の名前だからだ。
それだけなら別に感慨等沸かないが、問題は昨日の紅の言葉だ。
『今日は若い女のこだよぉ、やっぱ女はやらかくておいしいねぇ』
普段の紅ならば、わざわざ女の子だ子供だなんて言いはしない。
つまり、僕の推測が正しければ、僕が昨日食べたのは、山口美鈴ではないかという事だ。
もしこの推測が真実ならば、僕はすこし。
ほんのすこしだけ。
良い気味だと思った。
帰り道、いつも通る河原で何となく立ち止まって見た。
視線を下に向けると、そこにはタンポポがあった。
「これはたんぽぽだよな、でもこれは何だろう」
タンポポはわかるが、その周りの葉っぱたちは何かわからなかった。
僕もまだまだ勉強が足りないな。
「ふぅ、そろそろ帰らなきゃ・・・紅が心配する」
僕はまた帰路に着くと、それきりタンポポのことは忘れた。
「ねぇ、紅?」
「なぁに、しゅー」
「今日ね、タンポポを観察してから帰ってきたんだけど、タンポポの周りにあった葉っぱが何かわからなかったの・・・紅はあれが何かわかる?」
紅は小さく笑うと、僕の頭に手を乗せた。
「それはね、雑草っていうんだよぉ」
「雑草?教科書にはそんな植物載ってないよ?」
「ふふ、そぉだねぇ・・・あれは特別なんだよ」
「花もないのに?」
「花がないから、雑草なんだよぉ」
「よくわかんない」
「ふふ、今度教えてあげるよ」
「・・・うんっ」
華やかさなんてないけど、僕は雑草が嫌いじゃなかった。
なんだか僕たちに似ている気がしたから。
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