[携帯モード] [URL送信]

美しい化け物
4




大変遺憾ながら、俺の父親は美しい。
また、その息子である俺も例外ではなかった。
そして、俺と同じく望まぬ形で美しく産まれた男がいる。
幼馴染の京だ。
彼は言ってみれば異形だ。
整ったそのかんばせはまさに父親だった。
そう、京は俺の父親がレイプした女が身ごもった子である。
これを怒らずにいられるだろうか、無理だろう。
京に非はない。
しかし、そのかんばせを見ると、嫌でも父親のしたことを痛感してしまう。
これは父親の罪であって俺の罪ではない。
当たり前だ。
だが、言葉とは裏腹に俺の感情は荒れていた。
生来無表情といわれてきたが、父親のことを考えると顔が歪むのが自分でもわかる。
嫌悪。
憎悪。
あらゆる負の感情は父親のために存在している。
京。
哀れな子。
なんて醜い顔だろう。
そう言う度に君が傷ついているのは知っている。
しかし、俺はその顔が、醜くて仕方がない。
滑稽じゃないか他人の俺たちが同じ顔をしている。
これを貶さずにいられない!


自己に対する劣等感は年々でかくなっていった。
学校とゆう閉鎖された空間で見れば俺も京も美しいのだろう。
しかし、人の気も知らないで、その様な事云わないで貰いたい。
他人に壁を作った。
それは京以外壊す事の出来ない強固なものだった。
そんな時だった、桜蘭に会ったのは。
彼女も美しかった。
しかし醜かった。
一目で分かった。
彼女はこちら側の人間だと。
俺はまたしても、父親の被害者に出会ったのだ。
ひとつ下の彼女は俺を見て全て悟ったようだった。

「まあ、父にそっくり」

「君もね」

「私たち、兄弟のようですね」

「いや、他人だ」

「あら、まあ、それもそうですけれど」

「醜い」

「・・・嫌悪しているんですね、父を」

「殺したいほど」

「・・・可哀想な人」

「なんて醜い一族だ」

彼女はそれきりはなさなかった。
ただ黙って、俺を見ていた。
この醜いかんばせを!






「京」

「何」

「君は醜い」

「ああ」

「俺も醜い」

「ああ」

「俺たちは、他人だ」

「・・・ああ」

俺たちは他人だ。
それだけが唯一の救いだった。
兄弟だったら、こんな感情許されない。
京。
醜い俺の片割れ。
愛している。








[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!