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美しい化け物
2

There was a man in our town,

And he was wond 'rous wise,

He jump'd into a bramble-bush,

And scratch'd out both his eyes.




街に男が暮らしてたとさ

知恵があるともっぱら評判

イチゴ畑に飛び込んで

目玉が二つ飛び出たとさ




「賢い男?」

「そう、ただの馬鹿だと思うけど」

「でも、目玉結局取り戻すのに」

「目玉をなくした時点で馬鹿なのさ」

「なるほど」

今は休み時間です。
10分しかないこの時間を僕は今日も彼と過ごします。
彼は読書をしています。
邪魔はしたくありませんが、口が勝手に詠うのです。
彼は律儀に反応してくれます。
こんなことではいけません。
彼の読書を邪魔しに此処まで来たわけではないのですから。
彼は熱心に文庫本を読んでいます。
いったい何を読んでいるのでしょう。
カバーがしてあり、彼に聞かない限り分かりません。
聞いてよいのでしょうか。
彼の邪魔になることは明白です。
僕は困りました。
おそらくそれが顔に出ていたのでしょう。
彼は僕のほうを見ました。

「人間失格」

なるほど、彼は太宰治の著書を読んでいたようです。

「僕はあの話好きじゃないな」

「何故」

「『いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。いいえ、断じて自分は狂ってなどいなかったのです。一瞬間といえども、狂った事はないんです。けれども、ああ、狂人は、たいてい自分のことをそう言うものだそうです』・・・ってさ、不愉快だよ」

「人間失格だからね」

「人間に合格、不合格があるの?」

「さぁ」

「女と片っ端から心中するような奴が人間失格なの?」

「どちらかといえば、感情が欠如し、幼少期から他人を欺く道化を演じ、酒と女におぼれた事・・・じゃないかな」

「人間に合否をつけるなら、遼は間違いなく失格だね」

「そう・・・、京は合格なの?」

「僕はどうだろうね、まだ試験の最中さ」

「なら俺も、まだ判定出すには早いと思うけど」

「そうだね、今のは願望さ、遼が失格ならいいなぁ、ていう願望」

僕はわがままな男だ。
彼は無表情だが驚いている。
なぜ僕が彼が人間失格である事を望むかというと。
ああ、彼が合格なんて許せない。
ただそれだけです。
いえ、ほんの少し、期待しています。
彼に狂人と呼ばれる感情があれば良いと。
そうして、僕と心中してくれれば良いなんて。
僕のわがままです。




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