main 気が置けない お疲れー、と同僚に別れを告げ、今日も1日よく働いた、とため息を出す。 今日はなに食べようかなと考えていると、食材がもうあまり無いことを思い出した。スーパーに寄って帰ろうと闘技場を背に歩きだす。 私の家から闘技場までの間は歩いて20分。 割りとすぐ近くにある、結構新しく、設備がしっかりしているアパートに一人暮らしをしている。 エレベーターガールとしてはまあ、若いほうだが、働くのが早かったのでお給料も申し分ないくらいもらっている。ので、生活に困ることはない。 周りにはスーパーもあるし、本屋もあるし中々いい立地条件だ。 食材を買い、両手にレジ袋を持ちスーパーを出る。ちょっと買いすぎたかも、と思いつつ家に向かって歩いていると、プッと後ろでクラクションが鳴る。が、私じゃないだろうと思いそのまま歩いていく。 すると名前を呼ばれ、聞き覚えのある声に振り返ると、やっぱり思った通りヒソカが窓ガラスを開けて片手をあげていた。 「どうしたの?」 若干ビックリしつつ尋ねてみる。今日何か約束してたかな、と考えていると 「暗い夜道に女性の一人歩きは危ないからね」 なんてウインクつきで言われたので、キモい、と返しておいた。 車から降りたヒソカにレジ袋を奪われ後部座席に積まれたので、助手席に乗り込む。 「よくスーパーにいるってわかったわね」 疑問に思ったことを聞いてみる。誰にも言ってないので、もしかしたらすれ違っていたかもしれないのだ。 それにヒソカは愛の力だね、なんてふざけたことを言っていたので、はいはい、と流しておいた。 家に着き、車から降りる。ヒソカが取ってくれたレジ袋を受け取ろうと手を出すが、そのまま歩いていくので、こいつ今日はたかる気だな、と思いつつ後ろを着いていった。 今日みたいなことは珍しくない。よくヒソカは家まで送ってくれるので、そのお礼というかなんというか、私がご飯を作る。 別に1人分も2人分も変わらないので問題はない、1人で食べるより楽しいし。 最初はこの変な関係を疑問に思っていたが、最近はもう慣れた。何よりヒソカといると楽なのだ。変に気を使うこともないし、お互いに居心地がいいのだと思う。 部屋の前に着いたので鍵を取りだし扉を開ける。ヒソカから袋を受け取り私はキッチンに向かった。 食材を冷蔵庫にしまい、さあ作ろう、と腕捲りをして、手を洗ってないことに気づいた。 いけないいけない、と洗面所に行き、手洗いうがいをしてキッチンにもどる。 ヒソカにも声を掛けようとリビングをのぞけばもうしっかり寛いでいるヒソカの姿。 「ヒソカー手ー洗ってきてー」 声を掛けると、しぶしぶ、といった感じで腰をあげて洗面所の方へ歩いていった。 それを見届け調理に取りかかる。 出来上がったご飯をテーブルに並べていく。今日はスパゲッティサラダにオニオンスープ、メインはコロッケだ。 いただきます、と手を合わせてから食べる。最初ヒソカはこの行為を不思議そうに、ぎこちなくやっていたが、今ではすっかり板についている。(むしろ、やらないと食べさせなかった) 私の故郷はジャポンなので当たり前の事だが、やはりこっちでは珍しいみたいで最初はビックリされた。 「うん、おいしい」 「ホント?よかった」 ヒソカは食べながら必ず感想を言ってくれるので作る側としても作りがいがある。 まあ、まずいと言われたことはないが… ちょいちょい談笑しながら食事を終え、食後のお茶を飲んでいると。 「今日のご飯もおいしかったけど、僕はこの間のやつも好きだなぁ」 と、言うのでどれだ、と首を傾げて考える。 「あれだよ、ポテトと肉が入っている……肉じゃがっていってたっけ?」 ああ、と納得して手をポンと叩く。 そういえば、ヒソカがハンター試験を受ける前に家に来たとき、いきなりだったので前の日の残りしかなく、肉じゃがを出したんだった。 「気に入ったのなら今度は和食尽くしにしてあげる」 「楽しみにしておくよ」 何がいいかなー、と話をして3杯目のお茶を飲み終ると、そろそろ帰るよ、とヒソカが立ち上がったので玄関まで送る。 じゃあね、今日はありがとう、と扉を閉めようとすると、思い出したようにあ、そうそう、とヒソカが言うので扉を閉める手を止めて見上げる。 「今度、僕の青い果実が来ると思うから、君にも紹介するよ」 何て嬉しそうに言って、今度こそ、じゃあ、と扉を閉めた。 玄関でヒソカの足音を聞きながら、紹介って、と呆れつつ鍵をかけた。 (てか青い果実ってどんなネーミングセンスなのよ……) ←→ [戻る] |