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馬があう
「げっ…」
「やあ、元気だったかい?」
いつものように笑顔で扉を開けた瞬間目に入ってきた変態ピエロに、遠慮することなく顔を歪ませる。
ひどいなあ、と特に気にした様子もみせず、笑いながらエレベーターに入ってきたピエロみたいなこの男を若干睨みながらボタンを押した。
上に登っていくエレベーターの中、後ろでピエロ男改めヒソカのご機嫌なオーラを感じ、珍しいなと思いつつ尋ねてみた。
「やけに楽しそうね」
「久しぶりだからね、君に会うのは」
寂しかったかい、なんて言いながら後ろで一つに結んでいる髪を弄られ軽く引っ張られる。
「全然!」
首を振ってその手から逃れる。
ヒソカはククク、と笑いながら髪から手を離した。
この男、ヒソカと出会ってからもうすぐ2年がたつ。
最初はビビって会話にならなかったが、毎日のように話かけられれば嫌でも耐性がついた。
今では割りと話しやすい楽なヤツという位置にいる。自分でも不思議だ。
色々と昔のことを思い出していると、つん、とまた髪の毛を引っ張られる感触がして我にかえった。
「僕の話、聞いているかい…」
「あ、ごめん。全く」
ごめんごめん、と振り返り、何だっけ?と聞き返した。
「…新しい青い果実を見つけた、って話さ」
若干ジト目で見られながら話を聞いてみる。
何でも、ハンター試験で【お気に入り】を見つけたらしいのだ。
ふーん、と心の中でその【お気に入り】に同情しつつ適当に相づちを打つ。その返事に何を勘違いしたのか、嬉しそうに笑いながら、大丈夫、一番は君だから、なんて言ってきた。
「何が大丈夫なのよ…」
と、呆れながらため息をこぼした。
そういえば、こいつはハンター試験を受けに行っていたんだ、と思い出した。
「ところで、肝心の試験結果は?」
どうだったの?と聞けば、もちろん受かったよ、と返ってきた。
「何がもちろんよ、去年は落ちた癖に…」
「それは、試験管に見る目がなかったのさ」
この男がいきなりハンター試験を受けに行ってくるなんて言ったときはビックリしたもんだ。しかも、一回落ちていると聞いて益々ビックリ。
でも、落ちた原因を聞いてみて納得した。
こんな見た目が危ないヤツにハンターが勤まるものか、と失礼なことを思っていると。
「いひゃい!」
「今、失礼なこと考えてただろう…」
エスパー!とビックリしつつ頬っぺたを引っ張っている手を剥がそうとぺしぺし叩く。
満足したのか、にんまり笑って手を離したヒソカを睨みながら頬を擦る。
すると丁度エレベーターが着いたようで、音が鳴り、扉が開く。
ヒソカはすっと外へ出ると、こちらに振り返った。
「じゃあ、今夜7時に…」
そういうと、さっと背中を向けて歩いて行った。
「また勝手に…」
私は何度となく勝手に取り付けられた約束に、りょーかい、と返して扉を閉めた。
(久しぶりだし、まあいっか、)
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