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メリークリスマス!


「あわてんっぼーのーサンタクロースっ」

「……」

「クリスマスまえーにーやってきたっ」


歌いながら、ビーフシチューをかき混ぜる彼女は見るからに機嫌がいい

ふと横の、棚に置いてある小さなカレンダーを見れば、今日の日付は23日
なるほどそれでその歌かと、納得した




「えんとつのぞいーてーおっこちたっ

あいたた、ドンドンドン!あいたた、ドンドンドン!」


歌に合わせて足を鳴らす彼女は、どこからどう見ても浮かれてる
しかも結構大きな音を出したのだが、今の状態じゃ気づくはずもない




やたらと機嫌が良い彼女に珍しく家にお呼ばれされ、炬燵に入って暖をとりながら料理が出来るのを待っている


あきらかにいつもと違う雰囲気の部屋の中、あることを思う



まるでこの雰囲気は、そう、世の中で今1番受かれている連中と同じだ





所々で街を彩るイルミネーション
手をとりあって歩く恋人たち
楽しそうな家族の笑い声




この季節特有の雰囲気は、自分には全く関係ないもの
笑い合う家族もいなければ、恋人なんて尚更だ

別にそれを寂しいとか、羨ましいなんて思ったことはない

むしろ、どうしてこんなに浮かれることが出きるのか

少し鬱陶しいとさえ思っていたのだ



でも、




「あわてんぼうのーサンタクロースっ」

「…ふ」



また1番から始まった歌に呆れながらも、口許は緩んでいる自分がいる




いつもは静かなこの部屋だけど、たまにはいいかなんて思いながら、頬杖をついて彼女の歌に耳を傾けた




「ヒソカーご飯よそってー」

「はいはい」


どうやら出来たみたいで、お皿を出そうとしている彼女の方へ行こうと炬燵から出る


その時ふと目に入ってきた、今日の原因

テーブルの上に置かれた小さなクリスマスツリーを指でつついた










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