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急がば回れ3
思いのほかつねる力が強かったのか、ヒソカは私を拘束していた手をあっさりと離した
お腹に回った腕はなくなったのだけど、問題はもう一つある
まさに私の体を引っ張ったものの正体、それがまだ私の腕にくっ付いたままだ
「…ちょっと、これ外しなさいよ」
「やだ」
「何がやだっよっ」
ブンブン腕を振っても一向に外れることはなく、むしろそんな私を見てヒソカは笑っている
なんなんだもう、と腕を振るのをあきらめた
「とりあえず…見て分かると思うけど、私今、すっっっっっごく急いでるの!」
「へえ…どうして?」
「だーかーら、説明してる暇もないくらい急いでるんだってば!」
私の必死の形相を見て、しょうがないとため息をついたヒソカは嫌そうにバンジーガムを外した
ため息をつきたいのはこっちの方だ、と思わないでもなかったけれど、これ以上余計なことは言わないのが得策だ
外れた瞬間に受付まで走った
「あれ?今日休みじゃなかった?」
受付では見知った顔が仕事をしていて、完璧な営業スマイルが私の顔を見るなり崩れる
休みのアンタが何故ここに、と不思議そうにするのでそれに野暮用、とだけ返した
「ねえっ黒髪と銀髪の男の子来なかったっ?」
「黒髪と銀髪?ちょっと待って…名前は?」
「黒髪がゴン、銀髪がキルア」
「髪色はいいわよ…えっとー」
今日はまだ誰も受け付けてないみたいよ?そういって白紙の受付表を渡される
手にとって見ても、念のため2・3ページめくってみても、どこにも2人の名前は載っていなかった
「ていうか、その名前って今話題の2人じゃない。さっきの試合で200階入りしたって聞いたけど?」
「うん…そうなのよね…」
「まだ来てないってことは…どっかの意地汚い選手達にちょっかいかけられてんじゃない?あの2人まだみたいだし」
「えぇえ…さすがにあの3人組も、登録前の選手は狙わない、とは思うけど…」
新入りを執拗に狙って勝ち星を稼ごうとするあの3人組も、まだ登録が済んでいない相手に手をだすほど馬鹿じゃないだろう
別にあの人たちは強い選手と戦いたい訳ではないし
勝ってフロアマスターになるのが目的のようだから大丈夫だろうと思っていたのだけど
言われれば心配になってきた
その時、ふと思ったのは
ただ強い奴と戦いたいと、いつも思っている男
ヒソカは、あそこで何をしていたんだろう?
まさか私を待っていた訳じゃないだろうし
そういえば、さっきはあっさり過ぎるほど引きが速かった
それどころじゃなくてその時は疑いもしなかったのに、今考えると何だか釈然としないのは考えすぎだろうか
「そうだ、私と入れ替わりで帰ったのがいるんだけど、もしかしたら知ってるんじゃない?」
「えっ?」
「体調悪くてさっき交代したのよ、まだ帰ってないと思うけど…」
「!本当に!?」
「かもしれないってだけよ?」
「ありがと!!」
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