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急がば回れ2
「あはは、ごめんごめん」
「からかうなんて、ひどいっス…」
抱きしめてはみたけれど、あまりにも動揺しているのが可笑しくてすぐに離してあげた
一瞬で離れていったぬくもりに寂しさを覚えたが、これ以上いじわるをするのは可哀相なくらい顔が真っ赤になっていて、それがもう小動物のようで
可愛くて可笑しくて、思わず声にだして笑えば、からかわれたと気づいたのかしょんぼりしてしまったのだ
「本当に怪我はない?どこか擦りむいたとか…」
「大丈夫っス!助けてくれてありがとうございましたっス!」
「ふふ、どういたしまして」
さっきとは打って変わって元気な返事に微笑ましく思っていると、ポーンと聞きなれた電子音が聞こえてきた
その音にハッとした私は、本来の目的を思い出しエレベーターのボタンを押す
扉が開くのを待ちながら、少年に声をかけた
「ごめん!もう行くね!私そういえば急いでて…あ、もし明日になって何か悪いところが出てきたら遠慮なく教えてねっ」
「お、おす、」
隣のエレベーターが着きそうだが、それより早く前の扉が開いたので乗り込む
あまりの急な展開にポカンとしている少年には申し訳ないのだけど、一刻を争うのだ
「用があるときは受付かロビーに言ってくれれば大丈夫だから…君、名前はっ?」
「あ、自分っズシと言いますっ」
「ん、ズシくんね…じゃあ、また会おうね」
「!おすっ!!」
綺麗なお辞儀で見送ってくれたズシくんの頭が、扉が閉まると見えなくなる
何とも礼儀正しい少年だ
動き出したエレベーターに急げ急げと言っても、早くならないのだけど、ついつい口から出てしまう
いつもは思わないのに、こんなときのエレベーターが遅く感じられるのはしょうがないことだ
階段の方が早いんじゃないのか、なんてありえないのだけど
そうこう考えているうちに、目的の200階にたどり着いたので、少しでも早く開くように意味もなく[開]のボタンを連打する
扉が開ききる前に体を滑りこませエレベーターから出ると、そのまま受付けに向かった
突き当りを右に曲がったら確か受付があったはず、おぼろげに見取り図を思い出しながら走り、その突き当たりにたどり着いた瞬間
左手を何かに引っ張られ、気づいたときには体が中に浮かんでいた
「ぅぎゃっ…!」
思わず目を瞑ってしまい、どういう状況かわからないが犯人はわかっている、いやわかりっきている
こんなことするのはアイツしかいない
「…もうちょっとマシな声出ないのかい?」
頭の上で聞こえてくる失礼な言葉とため息、その声の主は、やっぱり思った通りの奴で
全く色気がないよ、なんて言いながら地面に下ろされた
「ヒ〜ソ〜カ〜、何すんのよ!?」
馬鹿じゃないの!?と首をひねり後ろを向けば、満面の笑顔でこちらを見ているピエロ男
びっくりした?なんて、楽しそうな顔で言われてしまい、脱力しながらせめてもの報復にとお腹に回されているヒソカの右の手の甲をツネってやった
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