main 急がば回れ ーー急がないと! 会場から出ようと、人の間をすり抜けるが中々進まない 先ほど、銀髪の少年、キルアくんの試合が終わったばかりで会場は大盛りあがりだ (もう!邪魔…っ) やっと人ごみから開放され、会場の外に出ることができたのだけど、そこにもたくさんの人が テレビの前では、会場に入れなかった人達が先程の試合を観戦していたのだろう 次は誰に賭けるだのなんだの話す会話が聞こえてくる とりあえず、200階ロビーで待っていたら会えるのは確実だ、とエレベーターの方へと走りだした 100mは走り、最後のあの角を曲がればもうすぐエレベーターが見えてくる そう思って若干走るスピードをあげたのだけど、角を曲がりきる前に見えたのは、エレベーターではなく少年だった 「いたたた…っ」 座り込みながら、腕の中の少年が無事か確認する お互いに走っていたから、このままぶつかれば私はともかく向こうが危なかったと、特に怪我もなさそうな様子を見て息を吐いた とっさに、ぶつかる直前後ろに飛んで威力を少なくしたのだけど、うまくいったみたいだ おかげで被害は私のお尻だけで済んだのでよかったことにする 「…大丈夫?怪我とかしてない?」 顔を覗き込んでも特に反応がないので、どこか痛いのかと心配になり声をかける この子の服装をよくよく見れば、間違いなく道着姿で 社員が選手を怪我させてどうする、と少し焦りながら今度は背中を軽く叩いた 「ねえっどこか怪我しちゃったっ?痛いところがあったら正直に言って?」 「…あ、いや…だいじょうぶっ、ス…」 やっと返してくれた返事に、とりあえず怪我はなさそうだと今度こそ安心することができた 「はぁ…よかった、私全然前を見てなかったの、ごめんね?」 「いやっ、自分も見てなかったっスっ…」 最初は顔を合わせてくれたのに、最後は小さな声で「すいませんっス…」と言うと、また顔を下げてしまった ずい、と追いかけるように顔を覗けば、そっぽを向かれてしまう え、嫌われた?と少しばかりショックを感じれば、顔を背けているせいでこちらを向いている耳が、真っ赤になっているのが見えた 「あ、あのっ離してくださいっス…」 どうやら照れていただけのようで、恥ずかしそうに離れてくれと言われ、改めて自分達の状態を思いだすと 受け止めてそのまま座りこんだからか、抱っこしているような格好になっている しかも、私の手が背中にあるから身動きが取れなかったのだろう なるほどそれで、と納得したので、離してあげようと手を背中から離すと 明らかにホッとした顔をされた、ので 「…えいっ」 「!何で力をこめるっスか!?」 思いっきり抱きしめてみた ←→ [戻る] |