main 酒は呑んでも呑まれるな!そのあと 彼女にしては珍しく限界を越えてしまったらしい。 先程まで真っ赤な顔でニコニコと笑いながら気分よく飲んでいたのだが、今はテーブルに突っ伏して眠ってしまっている。 いつも、潰れてしまわない程度にペースを考えて飲んでいるのに。 それほどこれが嬉しかったのだろう。空っぽになってしまったワインの瓶を手に取り、記念に部屋に飾っておこうかな、と考える。 酒好きな彼女なら目をキラキラさせて喜びそうだ。その時の様子が思い浮かんで自然と口角が上がった。 うーん、と声が聞こえたので起きたのか、と彼女の方を見れば、ごそごそと体勢を動かし顔をこちらに向けた。ただの寝言だったようでその目は閉じられたままだ。 気持ち良さそうに寝息をたてて眠っている彼女の髪の毛をいじる。 仕事の時は後ろで1つにくくっている髪は今は下ろされている。よく引っ張っては睨まれているが、ふよふよと彼女が動くと揺れる毛先がまるで尻尾のようでつい触ってしまう。 ポニーテールとはよく言ったものだ。 さらさらと綺麗な黒髪を指に絡めながらそういえば、彼女がこの間釣竿を持った少年と出会った、と言っていたのを思い出す。 それは間違いなく自分のお気に入りの少年のことだろう。 (それにしても二人が偶然にも出会っているなんて…) なんと面白いことか、再会の場面を思い浮かべククク、と笑いがこみ上げる。 それから暫く彼女の髪の毛を弄っていると、ポケットで携帯が振動した。 ここで出たら起きてしまうかと一瞬考えたが、気持ち良さそうに眠っている顔を見て大丈夫か、と携帯を耳に当てた。 「もしもし」 『あ、ヒソカ?』 ちょっと頼みたいことあるんだけど、明日空いてる?と相変わらず感情の読めない声で聞かれ、明日は特になにもなかったなと考える。 「問題ないよ…」 『あーよかった』 詳しいことはメールで知らせるよ、と早々と電話を切ろうとすると、あ、と思い出したような声が聞こえまたもや携帯を耳に当てる。 『そうそう忘れるとこだった、ゴンが家に来たよ。キルも一緒に家出てったから、たぶんそっちに行くんじゃないかな?』 キルは1回そこ行ってるし、じゃ会ったらよろしくと今度こそ切れた携帯。 「ククク、楽しみだなあ…」 携帯をポケットにしまう。そろそろ帰ろうかと彼女に目をやれば、薄目を開けボーッとこちらを見ていた。 「起きたのかい?そろそろ僕は帰るよ」 声をかけたが何も反応が返ってこない。まだボーッとこちらを見ている彼女。喉が乾いているだろうと立ち上がり冷蔵庫からお茶を取りだしコップに注ぐ。自分も飲もうとグラスを2つ手に持ち彼女の元へ向かった。 「はい、飲めるかい?」 「………」 グラスを差し出し飲むように促すが一向に動かかない。寝ぼけているのか、酔っぱらっているのか定かではないが正気じゃないことは間違いないだろう。 「大丈夫かい?もう寝た方がいい、明日も仕事だろ?」 「ん…」 頷き、目を擦る。その様子を見て、猫みたいだとか思っていると手招きをされ、顔を近づける。すると、2本の腕が伸びて首に絡みついてきた。 意外と勢いがよく突進されるような感じになり、そのまま後ろに倒れる。少しビックリしていると、耳元でふふふ、と楽しそうな笑い声が聞こえてきた。 「んふふ、ひーそかーぁ」 笑いながら、首に頭をぐりぐりしてくるので髪の毛が顔やら耳に当たってくすぐったい。 「ははッ、大サービスだね」 珍しくじゃれてくる彼女に笑いながら、頭を撫でる。さっきも思ったが本当に猫みたいだな、とまだ首に顔を埋めている姿をみて可笑しくなった。 (あれ、寝ちゃったのかい?やれやれ…) ←→ [戻る] |